「雪花の虎」



雪花の虎 1 (ビッグコミックス) (ビッグコミックススペシャル)

おすすめコミック。「海月姫」「かくかくしかじか」などの東村アキコ著、ヒバナ連載中。

戦国の英雄、軍神といわれた上杉謙信。武田信玄のライバルとして、歴史に名を遺す大人物ではあるが、実は彼が女であったとしたら? 男社会で強く生き抜く、女謙信の誕生と活躍を描く戦国大河絵巻。

上杉謙信が実は女だったかもしれない、というのは近年注目を浴びた俗説です。結構無理があるらしいのですが、それらしい伝承もあり、今でも小説などの創作物のネタになったりしています。本作は、その俗説を元にしてストーリーが構成されています。

謙信の生涯をなぞっていくので、歴史に詳しい人は男女置き換えて読み、戦国時代どころか歴史そのものが苦手な人は、時代背景説明と並行して書かれている別のコマで、東村先生がまったく関係ない話でお茶を濁してくれるという斬新な構成になっています。誌面の上部では歴史説明、下部では与太話をしているだけという……。

歴史にあまり関心がなくても、読者が楽しめるようにという配慮なのですが、それがあることにより、かしこまって読まなくてもよいエンターテイメントとして、本作を位置付けてくれています。ともすれば悲壮感ただよう戦国ものとしては、斬新な試みと思います。

もちろん、本編はいたって真面目なストーリーとなっており、女武将謙信の苦しみ、喜び、葛藤、そして激戦につぐ激戦を見事に描いています。今後ぶつかっていく武田信玄については、なかなかの曲者キャラとして、独特の味を出しています。彼は超強敵であり、謙信の秘密に迫る男になるに違いない。二人の対決が今から待ち遠しい感じ。

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「アンゴルモア 元寇合戦記」



アンゴルモア 元寇合戦記(1)<アンゴルモア 元寇合戦記> (角川コミックス・エース)

おすすめコミック。たかぎ七彦著、ComicWalker連載中。

1274年の元寇・文永の役。対馬に侵攻し、その後博多へと攻め込んでいく蒙古の遠征軍。とある罪により、対馬へと流刑されていた武士・朽井迅三郎(くちいじんざぶろう)は、宗主の娘・輝日姫(てるひめ)にその腕を買われ、蒙古から島を護る防衛軍として戦うことになった。源義経の残した技法「ギケイ流」の使い手である彼は、島を蹂躙せんと攻め立てる蒙古軍に、武力・知略をもって立ち向かう。とはいえ多勢に無勢で勝ち目はなし。勝負は援軍が来るまでの7日間を耐えきること。対馬の歴史に残る激闘の7日間が始まる……。

歴史ものということで、戦の過程や結果が分かった上で物語は進行します。つまり、結局蒙古軍は対馬を抜け、博多へと進行していくのですが、その間で起こった対馬内の戦いの様子が描かれます。歴史ファンでもなければ、どんな戦いになってどのぐらいの被害が出たとか、元寇が終わった後はどうなった等々知らないと思われるので、よくある歴史ものでありながら、興味深く読める作品となっています。

大河ドラマや三国志ものなど、どうなるか大体知ってしまっているものに比べ、結果は知っているけど過程がよくわからないものというのは大抵面白い。「キングダム」などはその典型だと思いますが、本作も期待にたがわず興味深く読み進めることができます。

迅三郎という架空のキャラクターを中心に、ファンタジー要素も含みつつ話が進みますが、戦ものとしてのバトル要素と、一癖も二癖もある人物たちの人間ドラマがうまく組み合わさっており、良作です。

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「わたしのカイロス」



わたしのカイロス (BUNCH COMICS)

おすすめコミック。からあげたろう著、くらげバンチ連載中。

とある惑星にて。見世物として、敵と戦い続けなければならないという「剣闘刑」を受けてしまった少女・グラジオラス。古代ローマのグラディエーターのような状況に置かれて失望するが、見知らぬ星に転送され、そこで出会ったロボットの少年・カイロスに勇気づけられる。そこに現れた強力な”敵”。グラジオラスとカイロスは協力し立ち向かうことになったが……。

どう考えても戦うことはできないだろうというひ弱な少女と、さらにひ弱なロボット少年が、絶望的な状況で強大な敵に戦いを挑み続ける、というプロット。

グラジオラスには絶対に負けられない理由があり、たとえ力が弱くても、勇気をもって戦いに臨みます。折れそうになる心をカイロスに支えられ、必死に立ち向かっていく姿が美しい。

様々な星をめぐりながら戦い続けていくようで、銀河鉄道999的に、さまざまな出会いと別れを繰り返して進むバディものになりそう。ストーリー、キャラクター、アクション描写等が平均してレベルが高く、長く続けてほしい作品です。

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「ゴールデンゴールド」



ゴールデンゴールド(1) (モーニング KC)

おすすめコミック。「刻刻」の堀尾省太著、月刊モーニングtwo連載中。

田舎の島町・寧島(ねいじま)に暮らす普通の女子中学生・早坂琉花(はやさかるか)は、ある日海岸で人の形をした奇妙な置物を拾う。捨てることもできないので、神社の祠に置き、些細な願いごとをしたところ、なんとその置物が福の神(?)となって琉花の前に現れる。その異形をみて、慌てて逃げる琉花であったが、家に帰ると福の神が民宿客として居座っていた……。それからというものの、急に民宿や売店が繁盛しだす不思議な現象が起こり始めるのだった。

あらすじだけ見ると、何かの昔話のようですが、福の神が普通じゃないので、やや怖さを感じるファンタジーものとなっています。まず、福の神がそもそも福の神かどうか、ほとんどしゃべらない上に、容姿が不気味な地蔵の形をしており、しかも島の人間には普通のおじさんに見えているため、だれも福の神であると断言できません。

そんなものが、自宅に居座っている時点でかなり不気味。しかも、祠に置いたのは琉花ですが、元の置物を洗う際に腕を折ってしまい、福の神は片手がない状態、これは許されることなのか悪いことなのか。また、異常なぐらいに店が繁盛していきますが、経営者であるおばあちゃんも取りつかれたように金策に走っていき、琉花を取り巻く環境が大きく変わっていきます。

この状況、不気味ではありますが、都会に憧れる好きな男の子を島内に留まらせるため、琉花は利用することを考えます。目標は都会のアニメイトに負けない品ぞろえの店舗を作ること。うまく福の神を使いこなせればよいのですが、うまい話には裏がある、何かしっぺ返しがあるような気がして怖いところ。不気味な福の神の正体と、琉花の恋路はどうなるのかに今後も注目。

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「響~小説家になる方法~」



響~小説家になる方法~(1) (ビッグコミックス)

おすすめコミック。「女の子が死ぬ話」の柳本光晴著、ビックコミックスペリオール連載中。

小説「木蓮」編集部に届いた分厚い封筒。それは、新人賞の応募作品だった。データでの投稿という応募要項が守られていないため、捨てられそうになっていたが、偶然にも若手の編集者・花井の目に留まる。作者の名は「鮎喰響(あくいひびき)」、その小説は、芥川賞にも手が届くのではないかという名作だった。しかし、プロフィールがまったく記載されていないため、新人賞への推薦もままならない。はたして作者は何者なのか……。名作を埋もれさせてなるものかと、花井は奮闘する。一方、当の作者はなんと新女子高生。腕試しに応募した新人賞のことはさておき、文芸部に入部しようと門をたたくが……。

あらすじや表紙からイメージされるのは「文学少女」というフレーズであり、それは概ね正しいのですが、響の性格が非常にエキセントリックなため、そのイメージは覆されます。文学少女といえば、物静かで夢見がちで、窓際でいつも本を読んでいる印象ですが、響きは違います。

我が強く、他人が自分をどう思うが気にせず、立ちはだかる敵はぶち倒していくような強い文学少女です。文学部にはびこっていた不良の先輩を、邪魔なので躊躇なく小指をへし折り追い出す胆力。才能に恵まれ、応募作品は絶賛される文章力。自分を溺愛するイケメンの幼馴染あり。なんちゅースペックだ……。

しかし、名作と賞されるその作品が世に出るか否かは、編集者の花井にかかっている状態で物語がスタート。花井の情熱により、まずは何とか新人賞の対象作品とすることができるか? が序盤の見どころとなります。

話が進むにつれ、響が持ちジャンルとしている純文学や、小説家を志す人々にも焦点が当てられます。誰もが響の才能に嫉妬し称賛する中で、浮かれるわけでもなく、危なっかしい態度を軟化させるわけでもなく、我が道を行く響。やがて同年代のライバル候補が意外なところから出現し……。先の読めないヒロイン=先が読めない展開で、非常に続きが気になる作品です。響は大成するのか、それとも自滅するのか?

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「あそびあそばせ」



あそびあそばせ 1 (ジェッツコミックス)

おすすめコミック。「りとる・けいおす」の涼川りん著、ヤングアニマルDensi連載中。

転校生の外国人・オリヴィアは、日本の遊びに興味津々。仲の良い友達と一緒に、今日も日本の遊びを学んじゃおう♪

という名目のもと、あっち向いてホイや、鉛筆で親指から小指の間まで連続でトントンするやつ、指相撲などに挑戦していきます。普通っぽいけど情緒不安定な華子、頭よさそうだけど英語ができない香純、そして……実は金髪碧眼というだけで日本育ちのオリヴィアの3人で、遊びに真剣に向き合う変な話。

表紙はかなり美少女ライクなオリヴィアですが、友人たちも含め、本編中では変顔やバカ行動など、大分おかしなことになってます。

遊びの内容も、確かにそういう遊びだけどそこまでやることはないんじゃね? という感じにエスカレートすることが多く、負けたらわきの匂いを嗅ぐなどの罰ゲームを含め、こいつらはいったい何をやっているんだ……という笑いある展開になります。

基本的にはただ遊んでいるだけなのですが、ここまで肉付けして、笑いあるストーリーを構成できるとは素晴らしい。本格的にどうでもいい感じになる日常系の作品は、見習ってほしいぐらいです。

今後の展開にも期待。試し読みはこちら〆。

「ちこたん、こわれる」



ちこたん、こわれる(1) (ヤングマガジンコミックス)

おすすめコミック。「イモリ201」の今井ユウ著、ヤングマガジン連載中。

高校一年生・桜坂亮平(おうさかりょうへい)は、一度聞いた声は忘れない、好きな声はスマホに録音して学校で聞くという、極度の声フェチ。一方、同じクラスで、いつでもヘッドホンとマフラー着用の宮原チコは、教師に怒られてもまったくしゃべらない不思議な女の子。ある日偶然、そんなチコの声を聞いてしまった亮平は、可愛らしいその声に一目ぼれしてしまう。何とか仲良くなろうと話しかけるが、相手にしてくれないチコ。執念実って、ようやくきっかけをつかんだと思いきや、チコは事故で死んでしまう……。

死んでしまったのに、チコは普通に登校してきます。一体なぜ? 実はチコはロボットだったのです。から始まるストーリー。正確には、とある理由により、自宅からリモートコントロールしているドローン。また、ドジっこ属性が強すぎて、すぐトラブルに巻き込まれて死んでしまう体質の持ち主。その秘密を共有した亮平は、秘密がばれて学校に来られなくならないように、また迂闊に死んでしまわないように(ドローンが壊れてしまわないように)チコを全力サポートします。

「実は私は」等をモデルにしていると思われますが、ヒロインが何度死んじゃってもいい、という大義名分のもと、色々と無茶な展開を入れてきます。定番ですが、幼馴染でツンデレ気味のヒロインもおり、三角関係もあり。また、声が好き、という点も、後々重要なファクターになっていきます。惚れた声のドローンには会えても、チコ本体には会えないという設定が秀逸。チコ本人に対面する日は来るのか?

なお、単行本巻末には、破壊してしまったドローンの機体リストあり。巻が進むにつれ増えていきます。どんだけ壊れてるんだよ、という。

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「競女!!!!!!!!」



競女!!!!!!!! 1 (少年サンデーコミックス)

おすすめコミック。「揉み払い師」の空詠大智(そらよみだいち)著、週刊少年サンデー連載中。アニメ化。

新体操部でオリンピックを目指せるほどの逸材・神無のぞみ。高校卒業を控え、体育大学への推薦をもらえることになったが、稼げないことを理由に断ってしまう。貧乏な一家を支えるために、彼女が選んだのは「競女」(けいじょ)といわれるギャンブル競技の選手。強い選手になれば億単位の収入があると聞き、後先考えずに競女の選手を目指すことにしたが……。

競女の競技内容は、プールの上に置かれた浮き場の上で、手足を使わずに押し合い、浮き場外へ落とすというもの。古い例でいえば、アイドル水泳大会の浮島戦、最近の例でいえば、DOAエクストリームのどんけつゲーム。競馬のように、誰が勝つかにかける公営ギャンブルということになってます。

複数人での試合が基本で、相手を押し出す手段は主に胸と尻。ゆえにちょっといやらしい戦いになります。物語の最初の方は、ちょっとエッチだけど、競技自体は押し合うだけの地味なお話なのかな……と思って読み始めるのですが、次第に設定がぶっ飛んできて、尻で顎先をかすめて脳震盪……から始まり、ヒロインの必殺技「真空烈尻(しんくうれっけつ)」の衝撃で敵を水着ごと吹き飛ばしたり、一度触った尻の特性をコピーできる「尻の財宝(ヒップ・オブ・バビロン)」、胸をねじってから突撃するドリル乳激(パイげき)「パイ・パイル・パイパー」など、読者のはるか斜め上にイってしまいます。

こうなると単なるエロバカっぽいのですが、ストーリーも手堅く、スポ根ものとしてのお約束を抑えつつ、試合展開と勝敗で荒らしてくるので、かなり熱い(個人的な考え方ですが、主人公が毎回勝つ作品は退屈)。アニメ化も決定しており、この先楽しみな作品です。

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「パルパル&ロケッタ」



パルパル&ロケッタ 全1巻 (ヤングキングコミックス)

おすすめコミック。おがきちか著、ヤングキングアワーズ連載完結。

王子様と結婚したい。めちゃくちゃ強い女勇者・パルパルティーナは、玉の輿を目指して今日もモンスター退治。ついにさらわれた王子様を助け出したと思ったら、とってもぽっちゃりな残念王子だった……。そればかりか、王子・スピアンは城からも追い出されてしまった。パルパルティーナはスピアンをダイエットさせるために、今日もやせ薬(マジックアイテム)を探しながら、懲りずに玉の輿探しを続けるのだった。

強くてスタイル抜群の勇者パルパルティーナと、優しいけどちょいおデブの王子スピアン、パルパルティーナのエージェント・ロケッタの三人が中心となって話が進みます。王子を痩せさせることができるアイテムの探索依頼を受けてモンスター退治に向かうものの、誤情報でずっこけたり、別の王子を救出依頼を引き受けるものの、ちょっとイメージと違ってがっかりしたりと、コメディ冒険ものです。

とにかくテンポがよい。モンスターはほぼ瞬殺し(パルパルティーナは超強いので当然)、その後の展開で見せる感じです。連載が短くて残念ですが、オチもついて、よくまとまっています。同録されている他二篇も面白い。デブが優遇されている珍しい作品となっております。

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「私が言うとおりになる」



私が言うとおりになる(1) (ヤンマガKCスペシャル)

おすすめコミック。毛魂一直線著(すごいペンネームだな……)。ヤングマガジン連載中。

ちょっとストーカーな少女・熊野メイは、超人的身体能力の持ち主だがアホのソウくんに片思い。ソウくんと同じ大学に入りたい一心で、進路希望票を盗み見るが、第一志望は……「魔女」? 俺は魔術を使えると豪語するソウくんを、説得して踏みとどまらせようとするが、なぜか一緒に怪しげな魔術専門学校へ入学することになってしまうことに……。

普通にしていれば可愛いのに、ソウくんを思うあまり、異常な行動および多彩な顔芸を見せるメイ。寄り添う仲になりたいのに、なぜかソウの敵として対峙することになってしまいます。対するソウは、身体能力は高いのにまったく学力がなく、アホ一直線というキャラクター。

この二人のやり取りでお話は進みますが、魔術を否定するメイに実は強力な力があり、肯定するソウにはまるでないところが重要な要素となっています。メイからしたらいらない能力であり、ソウからしたら喉から手が出るほどほしい能力。その力ゆえに、トラブルが発生し、恋の行方がどんどんこじれていきます。

ただ、どんなにソウに嫌われ恨まれても、愛の力で何度でも復活するメイがたくましく、ゾンビじみた行動力で決してめげません。恋する乙女のど根性が楽しめます。二巻からはライバル伊吹も加わり、ラブコメ度アップ。絶対成就しなさそうな恋ですが、ミラクルが起こるか!?

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「終電ちゃん」



終電ちゃん(1) (モーニング KC)

おすすめコミック。藤本正二著。モーニング連載中。

JR中央線新宿発高尾行きの最終電車に現れる終電ちゃん。仕事やお酒で帰りの遅くなった人々が、乗り遅れてはならないその日最後の電車、終電。終電ちゃんは、酔いつぶれた乗客たちを叱咤し、電車に詰め込み、明日はもっと早く帰れと檄を飛ばす。そこにはさまざまな人間ドラマがあった……。

終電の擬人化、ということでよいのでしょうか。電車の精霊というか主というか、不思議なキャラクターです。とりあえず、終電の屋根の上に乗って現れます。作品内で、終電ちゃんの存在がなんなのか、明確はされておらず、そこにいて当たり前の存在として描かれています。

終電ちゃんは、乗客たちのアイドルであり、また、頼れる母のような存在。乗客たちの悩みを聞き、トラブルがあれば解決し、あえて嫌われ役になってでも、終電としての職務を全うしようとします。職人気質、時に融通が利かない、プロの終電なのです。

そして、終電はもちろん中央線だけではないので、おてんばな山手線の終電ちゃん、おっとりな小田急線の終電ちゃんなど、続々と終電ちゃん仲間が登場してきます。人間ドラマで終わりと思いきや、終電ちゃん同士のドラマもあり、今後に期待が持てる作品。それにしても、終電の擬人化という発想ができたのが素晴らしい……。

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「一変世界」



一変世界 1 (BUNCH COMICS)

おすすめコミック。明治カナ子著。くらげバンチ連載中。

デラ神殿の大巫女見習い、プーリョ。不可思議なことが起こる神殿と、神殿を取り巻く神の森で、日夜厳しい修行に明け暮れている。友人のエズリン、元石像のミンミらの助けを借りながら、立派な大巫女様になることを目指して送る修行の日々と、そこで巻き起こる事件を描く。

独特の世界観が魅力的。森に巣食う不気味な魔物、石像の魂を死体に乗り移らせる術、さらには信仰の場である神殿が、最大のミステリースポットとなっており、入ったら出てこれなくなる迷宮や、人の形をしたしゃべる石像(神? 魔物?)などが散見されます。

プーリョはそれらを当然のもの、として認識していますが、細々とこの独特な世界観を説明するキャラもいないため、最初やや混乱します。しかし、話が進むにつれ、こういうものなのだと、だんだんと理解できるようになってきます。トラブルで結構あっさり人が死んでしまったり取り込まれてしまったりしますが、この神殿では割と日常茶飯事の模様。そのあたりがドライに描かれているのも本作の大きな特徴です。神は理不尽。

第二巻以降になると、大巫女の存在や、プーリョ自身の秘密に迫る展開となり、彼女を取り巻く陰謀や策略めいたものが次第に姿を現します。プーリョは無事に立派な大巫女になれるのか、続きが非常に楽しみです。

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「オパパゴト」



オパパゴト(1) (シリウスKC)

おすすめコミック。白梅ナズナ著。月刊少年シリウス連載終了、全3巻完結。

由緒正しき女学校、薔薇ノ宮女学園で行われている疑似家族計画。ランダムに選ばれた生徒たちが家族となり、貧乏長屋から暮らしをはじめ、他の家族(ライバル)たちと戦い、生活の質を向上させるリアルおままごとバトルである。とある理由で父親役に任命された夏川春日(なつかわはるひ)は、見ず知らずの少女たちとともに、疑似家族生活を開始するのであった。

おままごとからもじったタイトルですが、タイトルに偽りなく、まさしくおぱぱごとをすることになる主人公の春日。彼女自身は学園の生徒ではなく、自分そっくりの生徒の代理として送り込まれます。もともとは粗野な性格の春日が、お上品なお嬢様学校に編入することになり、カルチャーショックを受け、また、女子なのにいきなり父親として任命されたことについては大混乱。それも嫁と一男四女の大家族!

最初は戸惑う春日ですが、一家の主として、家族をまとめるために奔走します。缶詰の開け方も知らない家族たちの面倒、新婚初夜(?)、ライバルの家族たちとの戦い……。心休まるときはない。やがて春日たちの疑似家族は、困難を乗り越え、本物の家族の絆を紡いでいきます。そんな中、急に訪れる一家崩壊の危機、そこでとった春日や家族たちの行動とは?

一応百合モノ?かと思われ(家族としてあまりにも自然すぎて感じられない)、特に嫁役の紫(ゆかり)さんは、役柄を超えて春日に愛情を注いでいきます。ぽやっとした人なのですが、本気になると色々と情け容赦ないところが魅力です。要所要所で重要な役目を担い、この人あっての春日家といえるでしょう。

もっと長く続いてもらいたかった良作。個性豊かな家族たちの個々のエピソードが見てみたかった……。とはいえ、短い中でも、エンディングは秀逸なので、ぜひとも読んで頂きたい。

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「勇者が死んだ! 」



勇者が死んだ! 1 (裏少年サンデーコミックス)

おすすめコミック。スバルイチ著。裏少年サンデー連載中。

ふとももフェチのしがない村人トウカと、ムッチムチなふとももの幼馴染ユナ。二人の暮らす村に、突然魔物が現れた。魔物に襲われそうになるユナであったが、間一髪、颯爽と現れた勇者シオンに救われる。しかしその直後、シオンは、トウカが魔物対策に掘っていた落とし穴に落ちて、こともあろうか命を落としてしまう。勇者が死んでしまった。この事実を隠すために、ネクロマンサー・アンリの手によって、勇者シオンの肉体にトウカの魂を入れ、シオンの代わりに世界を救う旅に出ることに……。

まさにタイトル通りの展開の本作。死んだ勇者になりすまし、ただの農夫が世界を救う冒険に出ます。しかもトウカはシオンとは全く異なり、スケベでかなりいい加減な性格の持ち主。勇者というより外道に近いのですが、それでも見た目は勇者様。望むものはすべて手に入るやりたい放題。

とはいえ、化けの皮がはがれるのも案外早く、弱いままで魔物と戦うことになっていきます。
基本的には雑魚といってよいトウカが、悪知恵を働かせて、強力な魔物や悪い人間たちを倒していくというカタルシスと、意外な展開が多く先の読めないストーリーが魅力の作品です。
世界観も独特。物語が進むにつれて、さまざまな伏線が回収されていくのもよい点。

また、作者の趣味なのか、主人公の性格ゆえなのか、ふとももに執着している描写も、ニッチ市場を開拓する手段として秀逸。ふとももフェチ垂涎のコミックとしてもオススメ。

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「魔法少女特殊戦あすか」



魔法少女特殊戦あすか(1) (ビッグガンガンコミックス)

おすすめコミック。原作・深見真、作画・刻夜セイゴ。月刊ビッグガンガン連載中。

かつて魔法少女として世界を救った少女・大鳥居あすか。伝説の戦いから3年後。現在は普通の女子高生として暮らしていた。しかし、多くの仲間を失った凄惨な戦いの記憶を忘れることはできず、心の枷として彼女を苦しめていた。そんな中、偶然にも友人の危機を救うことで、再び新たな巨悪との戦いに挑むことになったあすか。はたして真の安息を取り戻すことはできるか……?

その昔、魔法少女として戦い、今は年をとって少女から青年へ。平和になった世界のその後の苦悩を描く作品は何点かありますが、こちらは魔法少女時代も両親を惨殺されたり仲間を殺されたりで、かなりハードな魔法少女兵士として戦っていた経歴の持ち主がヒロイン。クールな外見ですが中身は熱血系で、正義感も強い主人公タイプです。魔法少女らしく、魔法のロッドでも武器にするのかと思いきやそうではなく、カランビット(特殊な形状のナイフ)で斬殺メインという、肉弾戦派(超強い)。

魔法少女は何人かいて、それぞれが今も何らかの活動をしていますが、あすかだけは休眠状態となっています。あなたも戦ってほしい、という元仲間の申し出に応じるか否か、戦いを望まないかつての英雄が、再び戦火の中に舞い戻るかが序盤の展開となります。まあ、戻らないと話にならないので、当然戻っていくわけですが、どうやら敵は新たな魔法少女らしい……ということが分かってきます。

魔法少女ものを下地にしながらも、ストーリーはオリジナル性が高く、アクション描写もうまいです。他の魔法少女との協力、牽制、敵対など、今後いろいろと展開できそうなところも面白いかと。

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「兎が二匹」



兎が二匹 1 (BUNCH COMICS)

おすすめコミック。山うた著、月刊コミック@バンチ連載終了。2巻完結。

不老不死の女・稲葉すず398歳、同居している青年・宇佐美咲朗19歳。死にたくても死ねない体となってしまったすずは、毎日咲朗に自分を殺させようとするが、うまくいかず確実に自分が死ねる方法を探していた。一方の咲朗は、すずに死んでほしくない一心で、何とか彼女の心をひきとめようとする。しかしその思いは届かず、やがて悲劇的な結末が訪れることになる……。

死を望む女と、死んでほしくない青年の物語。悲劇的な結末から物語はスタートしますが、そこに至る経緯について、すずの記憶が語られていくことになります。400年近く死にたいと思いながらも生きてきたすずですが、咲朗との出会いは、彼女に生きていく活力を与えてくれる、特別なものでした。それでもなぜ死を望むのか。

悲しくなると死んでしまうといわれている兎。タイトル通り、確かに二匹の兎がいます。「悲哀」という言葉がぴったり当てはまるテーマの作品。二巻で完結の短編ですが、キャラクター、ストーリー、心情描写すべてのレベルが高く、不朽の名作と言えるでしょう。これは必読!

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「お客様は神様です。」



お客様は神様です。(1) (シリウスKC)

おすすめコミック。メイジメロウ著、月刊少年シリウス連載中。

コンビニ業界では有名な魔店・ネコマーケット威張鬼(いばらき)店。ありとあらゆるモンスター客が現れ、過酷な接客に耐え切れず、新人はあっという間に辞めていく……。そんな悲惨な環境で働き続ける青年・白塚佑司(しらつかゆうし)のもとに、新たなバイト志願者、朱羅々(しゅらら)ちゃんがやってきた。笑顔がとてもチャーミング、何かわけありでバイト生活を続ける彼女は、「お客様は神様です」を標語に今日も笑顔の接客。しかしそんな彼女には秘密があって……。

タイトルのように、「お客様は神様」であることを徹底するために、どんなに粗野な客も丁重におもてなしをする朱羅々。彼女に触発されて周りも……とはいかず、お客様のご要望ならと、殴られても平気だったり、強盗にも笑顔で接客等の度を越した徹底ぶりにややヒキぎみ。すべては親の借金を返すため、けなげに働く仏のような朱羅々でしたが、怒らせるととんでもないことが起こってしまいます。

キツネ目のヒロイン朱羅々が非常にかわいらしく、しかし精神的にも肉体的にも恐ろしい、という非常に困ったキャラクター性が魅力の作品です。お客様のためならば……を基準に行動を起こすため、何をどう解釈されるか分らず迂闊なことを言えない恐怖。

奇想天外なモンスター客と、度を越した店員朱羅々にはさまれ、白塚に安息の日はありません。さらに朱羅々のニート兄・鬼童丸(きどうまる)も加わり、今日もネコマーケットに騒動が……。

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