カテゴリー別アーカイブ: おすすめ書籍

「スワロウテイル人工少女販売処」

スワロウテイル人工少女販売処 (ハヤカワ文庫JA)(Amazon)

ハヤカワ文庫JA、藤真千歳(とうまちとせ)著、人工妖精(フィギュア)と呼ばれる少女を主人公にしたSFです。ワンフェスにかけてみた。

種のアポトーシス(プログラムされた細胞死)という病気に感染してしまった者は、東京湾(関東湾)に浮かぶ人工島に隔離されていた。島では感染を防ぐために男性地区と女性地区に区分し、男女を別々に住まわせていた。

異性の代わりとして造られたのが人工妖精と呼ばれる人造人間たち。彼、彼女らは微細機械(マイクロマシン)によって構成されているが、人間と同じように脳や心臓があり、魂を持ち、容姿も年齢もさまざま。人間と異なるのは、肉体的に成長をしないこと、背中には羽を持ち、「人間に危害を加えてはならない」などの規則を破れないこと(ロボット3原則のようなもの)。

主人公の揚羽(あげは)は、人工妖精の中でも最も劣等な5等級に分類され、羽が黒く醜くて、学習能力が低いことから自称「バカ」。ただし、彼女には”死んだ妖精の心を読む”能力と、人工妖精でありながら原則に反して殺傷ができる、という特異な才能を持っていた。揚羽はその能力を活かし、暴走した人工妖精「傘持ち(アンブレラ)」による連続殺人事件の真相を追っていた。

あらすじ長くてすみません。どこで区切っても話が通じないぐらい設定が凝ってます。世界観だけでお腹いっぱい楽しめる。物語もバトルあり謎解きあり恋あり旅ありハードボイルドあり陰謀ありのSFロマンが盛沢山。オススメです。〆

※この記事は2010/07/26に「Psychelia.com」に掲載したものです。

「ハーモニー 」

ハーモニー (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)(Amazon)

オススメ小説。第30回日本SF大賞。伊藤計劃(いとうけいかく)著、ハヤカワSFシリーズJコレクション。

大災禍・メイルシュトロムと呼ばれる核戦争後、政府ならぬ”生府”によって統治された世界。人間の生活と健康は徹底的に管理されてはいるものの、それに疑問を抱くことはなく争いのない優しい世界。主人公・霧慧トァン(きりえとぁん)が出会った反社会的な少女・御冷ミァハ(みれいみぁは)は、そんな世界に反抗しようと、とある事件を起こすが失敗してしまい、彼女の思想に傾倒していたトァンは心に大きな傷を負ってしまった。それから13年後、忌み嫌っていた生府の監察官となっていたトァンは、世界を揺るがす大事件に遭遇するが、その事件の背後にミァハの存在があるのではと疑う……。

ネタバレしないようにあらすじを書いていくと、なんだか分からないものができあがるという、悪い見本ですね。以後気を付けます。

いわゆるユートピアを良しとせず、それに抗って生きる女のハードボイルドSFです。トァンさんは、タバコが吸いたいけれど本国では法律で吸えない、じゃあ海外の紛争の調停の仕事でも請け負って、現地で隠れて吸っちゃえばバレないじゃん、というなかなかの荒くれ者かつ反社会的思想の持ち主です。凛々しい。

文章内ではタグが頻繁に使われ、慣れないとかなり邪魔です。<regret>○○は××と思った</regret>のような。基本的には感情を表すものとして、この場合regret(残念)タグで囲まれた文章「○○は××と思った」は残念な気持ちで言われている、という意味です。HTMLを知っている人には分かりやすいかも。何故このようなレトリックがなされているかは、最後の最後で明かされます。必要なタグなのです。この仕組みも面白い。

やや難解なテーマを持つお話ではありますが、展開は早いしSFなので問題ないでしょう。読んで損はなし。

なお、著者の伊藤計劃氏はメタルギアソリッドシリーズ好きとして有名で、MGS4のノベライズも手掛けましたが、2009年にガンのため34歳で死去。惜しい人を早くに亡くしたものです……。〆

※この記事は2010/11/07に「Psychelia.com」に掲載したものです。

「作者不詳 ミステリ作家の読む本(上)・(下)」

作者不詳 ミステリ作家の読む本 (上) (講談社文庫) (Amazon)

「厭魅(まじもの)の如き憑くもの」に続き二回目の紹介となる三津田信三(みつだしんぞう)著の怪奇推理小説です。

主人公である編集マン・三津田信三と友人の飛鳥信一郎が手に入れた一冊の推理小説「迷宮草紙」。七編の短編小説からなるこの本は、作者不詳、出自不明、読んだ者はすべて行方不明になっているという怪奇書。七編すべてが解答編なしの未解決事件で、その謎ときは読者に委ねるという構成になっている。

しかも。本を読み始めた二人を、本の内容に関連したさまざまな怪奇現象が襲い始める。各編の謎を解けなければ、本の呪いを受けて死ぬ。しかも期間は一週間。怪異の影に怯えながらも、二人は「迷宮草紙」の謎解きに挑む。

著者の作品すべてに言えることですが、推理小説として面白く、また怪奇小説としても楽しめ、かつ今回は推理小説を読んだ読者(主人公)の推理を、我々が読むという二重構成という工夫がされています。上下巻と結構なボリュームがありますが、短編×7なので案外さくさく読めてしまいます。

有名推理小説へのオマージュのようにも読めるので、推理小説が好きな人に特にオススメ。ただ、「迷宮草紙」の謎がすべて解けなければ、あなたに怪奇現象が降りかかるかも……〆

※この記事は2011/01/09に「Psychelia.com」に掲載したものです。

「それゆけ! 宇宙戦艦ヤマモト・ヨーコ[完全版]」

それゆけ! 宇宙戦艦ヤマモト・ヨーコ[完全版]Ⅰ (朝日ノベルズ)(Amazon)

なつかしい。「それゆけ! 宇宙戦艦ヤマモト・ヨーコ」は十年近く前の人気ライトノベルシリーズで、そこそこ人気ながらも完結せずに終わってしまった作品の(今度こそ)完結版。庄司卓著、イラストは赤石沢貴士。

今の購買層に合ったのか、それとも昔の若者達が買っているのか、そこそこ売れているらしい。

天才ゲーマー女子高生・山本洋子は、その腕を見込まれて未来の戦争に参加することになった。その戦争は様々な利権をかけて国の代表者同志が戦う代理戦争で、安全な脱出転送装置のためにパイロットは絶対に死傷することはない。スカウトされた洋子は特一級打撃戦艦(スーパーストライク)「TA-29 ヤマモトヨーコ」に搭乗し、仲間と共に戦う。

SFバトルにギャグ要素を取り入れた物語です。ロボットや戦闘機ではなく戦艦というのが特徴。火力が凄まじく、統一場粒子兵器ザッパーはその気になれば惑星一つ吹っ飛ばせる超威力。その割に敵チームと口げんかしながらドンパチやる陽気さが面白い。

なお、アニメ版(約10年前)の監督は「化物語」でおなじみ新房昭之氏でした(参考動画:TV版OP)。OVA版は面白かったけれど、TV版は不評だった気がする。まあ、昔の話です。〆

※この記事は2011/01/17に「Psychelia.com」に掲載したものです。

「星の海にむけての夜想曲」

星の海にむけての夜想曲 (星海社FICTIONS)(Amazon)

オススメ書籍。「1000の小説とバックベアード」、「フリッカー式 鏡公彦にうってつけの殺人」など鏡家サーガの佐藤友哉著。

ある日突然、空一面に咲き乱れた花々。枯れることなく咲き続ける花にもたらされた謎の花粉によって、人間たちが狂い始めてしまう。暴徒と化した人々によって街は荒廃し、死屍累々の地上を捨て人類は地下にこもる。希望を失った世界の中で、天文部の少女・江波は、もう見ることができなくなった星を見ようと奮闘するが……。

花に覆われた絶望的な世界で、それでも生きていく人々の群衆劇。星を見ることが夢の天文部の少女、花粉のために狂ってしまった人々を殺戮処理する傭兵の男、誰もいなくなった地下都市にたった一人残された少年、花々を滅ぼすためにある決断を行う二つの存在。彼らは願いを叶えることができるのか。

(はっきりとは宣言されていませんが)震災後をモチーフにした作品です。花粉(放射能)に覆われ人が住めなくなり、狂った人々の死体が道を埋めつくし、建物は瓦礫と化し荒廃した街と、イメージせざるを得ない描写が多くなっていますので、苦手な方は注意。

かなり絶望的なシチュエーションですが、とある人物の小さな挑戦が実を結び、やがて大きな希望へとつながっていきます。ページ数も多くはないので、さらっと、変わり種の小説を読みたい人向け。〆

※この記事は2012/10/23に「Psychelia.com」に掲載したものです。