月別アーカイブ: 2013年3月

「スワロウテイル人工少女販売処」

スワロウテイル人工少女販売処 (ハヤカワ文庫JA)(Amazon)

ハヤカワ文庫JA、藤真千歳(とうまちとせ)著、人工妖精(フィギュア)と呼ばれる少女を主人公にしたSFです。ワンフェスにかけてみた。

種のアポトーシス(プログラムされた細胞死)という病気に感染してしまった者は、東京湾(関東湾)に浮かぶ人工島に隔離されていた。島では感染を防ぐために男性地区と女性地区に区分し、男女を別々に住まわせていた。

異性の代わりとして造られたのが人工妖精と呼ばれる人造人間たち。彼、彼女らは微細機械(マイクロマシン)によって構成されているが、人間と同じように脳や心臓があり、魂を持ち、容姿も年齢もさまざま。人間と異なるのは、肉体的に成長をしないこと、背中には羽を持ち、「人間に危害を加えてはならない」などの規則を破れないこと(ロボット3原則のようなもの)。

主人公の揚羽(あげは)は、人工妖精の中でも最も劣等な5等級に分類され、羽が黒く醜くて、学習能力が低いことから自称「バカ」。ただし、彼女には”死んだ妖精の心を読む”能力と、人工妖精でありながら原則に反して殺傷ができる、という特異な才能を持っていた。揚羽はその能力を活かし、暴走した人工妖精「傘持ち(アンブレラ)」による連続殺人事件の真相を追っていた。

あらすじ長くてすみません。どこで区切っても話が通じないぐらい設定が凝ってます。世界観だけでお腹いっぱい楽しめる。物語もバトルあり謎解きあり恋あり旅ありハードボイルドあり陰謀ありのSFロマンが盛沢山。オススメです。〆

※この記事は2010/07/26に「Psychelia.com」に掲載したものです。

「ほんとにあった!霊媒先生」

ほんとにあった!霊媒先生(5) (ライバルコミックス)(Amazon)

オススメコミック。松本ひで吉著、月刊ライバル連載中のギャグ4コマ。

趣味特技が降霊という、霊能力を持つ先生・木林呪理(きばやしじゅり)と生徒と妖怪と猫が織りなす怪奇漫画です。夏だけにホラーコミックを……と思ったら、ついうっかりこの作品をチョイスしてしまいました。

腹を抱えて笑えると言うほどではありませんが、霊能力ネタはいろいろと応用が効いていて面白いです。歴史上の偉人降霊授業、信長の霊を降霊させた女子高生キャラとか、死神・疫病神・貧乏神姉妹、身代わり化け狸ぽんきっつぁん、便利な使いっぱしりクダキツネなど、個性的なキャラがたくさん。

霊能力に興味のある方はどうぞ。〆

※この記事は2010/08/12に「Psychelia.com」に掲載したものです。

「マルドゥック・スクランブル」

マルドゥック・スクランブル(1) (少年マガジンKC) (Amazon)

11月に第一作の劇場公開を控える「マルドゥック・スクランブル」のコミカライズ版。原作:冲方丁(うぶかたとう)、大今良時(おおいまよしとき)著、別冊少年マガジン 連載中。

小説のコミカライズにろくなものがないイメージがあったので敬遠してましたが、読んでみたら意外とよかった。帯&巻末の原作者メッセージは褒めすぎにしてもかなり読める。

画はさほどうまくないものの、コマ割りと構図が優秀、アクションとスピード感(緩急)も十分なレベル。ヒロインの内向的(だけど暴力的)な性格も良く出てると思います。

作画風景がYouTubeにアップされていますが(参考動画(YouTube))、著者は新人の女性なんですね。末恐ろしい。

現在は最新の2巻が発売中。原作小説は全3巻で発売中。なお、ライトノベルではなくハヤカワ文庫SFなのでお間違えなきよう。〆

「ジゼル・アラン」

ジゼル・アラン (1) (ビームコミックス)(Amazon)

オススメコミック。笠井スイ著、隔月刊漫画誌「Fellows!」にて連載中。

世間知らずのアランお嬢様が、何でも屋「ジゼル・アラン」を開店。犬の散歩から夜逃げまでをモットーに、訪れる人々の小さな依頼を請け負っていく。助手のエリックをこき使って……。

おそらくワケありで家を飛び出したお嬢様が、自立と社会勉強と好奇心のために働くお話は、まあ、予想通りの”私何も知らなかった”展開となるけれど、脇を固めるキャラクターが魅力的だし、各話の構成がしっかりしていて読みやすい。

そうでなくても、ジゼルが可愛いからすべてが許される感じ。とにかく表情が豊富で、笑ったり怒ったり忙しい。服もいいものをたくさん持ってます。性格は好奇心旺盛、行動的、利発。見ていて飽きない娘です。

隔月刊ということで、次巻が出るのがいつのころやらですが、次も買ってみようと思います。〆

※この記事は2010/09/27に「Psychelia.com」に掲載したものです。

「さんかれあ」

さんかれあ(1) (少年マガジンコミックス)(Amazon)

オススメコミック。「ケンコー全裸系水泳部 ウミショー」のはっとりみつる著、 別冊少年マガジン連載中。

ゾンビ娘萌えという危険なジャンルの作品です。生きた女にキョーミないというアホな主人公と、瞳孔が開きっぱなしのゾンビ娘のラブコメ。

ゾンビ映画好きの主人公・降谷千紘(ふるやちひろ)は、死んでしまった愛猫ばーぶを蘇らせるため、夜の廃墟で怪しげな実験を繰り返していた。実験が元でお嬢様学校の令嬢・散華礼弥(さんかれあ)と知り合うことになり、二人は協力して蘇生薬調合を行うが、とある事件のせいで礼弥が死んでしまう。しかし、礼弥が死ぬ前に服用していた蘇生薬のおかげでゾンビとして復活!

ネタばれになるので多くは語れませんが、礼弥にはゾンビ、というか死者ゆえのハンディーがあり、それを補うべく主人公が奔走します。放っておくと本当に死んでしまうので、いや死んでるんですが、肉体的な意味で消失してしまうので、ケアは怠れません。

また過保護に育った令嬢ゆえのガードの甘さ、無邪気さで色々と問題を起こします。娘ラブのお父様との確執があったり。

ウミショーが面白かったと思える人は読んで損なし。ゾンビ好きじゃなくても楽しい作品です。〆

※この記事は2010/10/12に「Psychelia.com」に掲載したものです。

「ハーモニー 」

ハーモニー (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)(Amazon)

オススメ小説。第30回日本SF大賞。伊藤計劃(いとうけいかく)著、ハヤカワSFシリーズJコレクション。

大災禍・メイルシュトロムと呼ばれる核戦争後、政府ならぬ”生府”によって統治された世界。人間の生活と健康は徹底的に管理されてはいるものの、それに疑問を抱くことはなく争いのない優しい世界。主人公・霧慧トァン(きりえとぁん)が出会った反社会的な少女・御冷ミァハ(みれいみぁは)は、そんな世界に反抗しようと、とある事件を起こすが失敗してしまい、彼女の思想に傾倒していたトァンは心に大きな傷を負ってしまった。それから13年後、忌み嫌っていた生府の監察官となっていたトァンは、世界を揺るがす大事件に遭遇するが、その事件の背後にミァハの存在があるのではと疑う……。

ネタバレしないようにあらすじを書いていくと、なんだか分からないものができあがるという、悪い見本ですね。以後気を付けます。

いわゆるユートピアを良しとせず、それに抗って生きる女のハードボイルドSFです。トァンさんは、タバコが吸いたいけれど本国では法律で吸えない、じゃあ海外の紛争の調停の仕事でも請け負って、現地で隠れて吸っちゃえばバレないじゃん、というなかなかの荒くれ者かつ反社会的思想の持ち主です。凛々しい。

文章内ではタグが頻繁に使われ、慣れないとかなり邪魔です。<regret>○○は××と思った</regret>のような。基本的には感情を表すものとして、この場合regret(残念)タグで囲まれた文章「○○は××と思った」は残念な気持ちで言われている、という意味です。HTMLを知っている人には分かりやすいかも。何故このようなレトリックがなされているかは、最後の最後で明かされます。必要なタグなのです。この仕組みも面白い。

やや難解なテーマを持つお話ではありますが、展開は早いしSFなので問題ないでしょう。読んで損はなし。

なお、著者の伊藤計劃氏はメタルギアソリッドシリーズ好きとして有名で、MGS4のノベライズも手掛けましたが、2009年にガンのため34歳で死去。惜しい人を早くに亡くしたものです……。〆

※この記事は2010/11/07に「Psychelia.com」に掲載したものです。

「作者不詳 ミステリ作家の読む本(上)・(下)」

作者不詳 ミステリ作家の読む本 (上) (講談社文庫) (Amazon)

「厭魅(まじもの)の如き憑くもの」に続き二回目の紹介となる三津田信三(みつだしんぞう)著の怪奇推理小説です。

主人公である編集マン・三津田信三と友人の飛鳥信一郎が手に入れた一冊の推理小説「迷宮草紙」。七編の短編小説からなるこの本は、作者不詳、出自不明、読んだ者はすべて行方不明になっているという怪奇書。七編すべてが解答編なしの未解決事件で、その謎ときは読者に委ねるという構成になっている。

しかも。本を読み始めた二人を、本の内容に関連したさまざまな怪奇現象が襲い始める。各編の謎を解けなければ、本の呪いを受けて死ぬ。しかも期間は一週間。怪異の影に怯えながらも、二人は「迷宮草紙」の謎解きに挑む。

著者の作品すべてに言えることですが、推理小説として面白く、また怪奇小説としても楽しめ、かつ今回は推理小説を読んだ読者(主人公)の推理を、我々が読むという二重構成という工夫がされています。上下巻と結構なボリュームがありますが、短編×7なので案外さくさく読めてしまいます。

有名推理小説へのオマージュのようにも読めるので、推理小説が好きな人に特にオススメ。ただ、「迷宮草紙」の謎がすべて解けなければ、あなたに怪奇現象が降りかかるかも……〆

※この記事は2011/01/09に「Psychelia.com」に掲載したものです。

「それゆけ! 宇宙戦艦ヤマモト・ヨーコ[完全版]」

それゆけ! 宇宙戦艦ヤマモト・ヨーコ[完全版]Ⅰ (朝日ノベルズ)(Amazon)

なつかしい。「それゆけ! 宇宙戦艦ヤマモト・ヨーコ」は十年近く前の人気ライトノベルシリーズで、そこそこ人気ながらも完結せずに終わってしまった作品の(今度こそ)完結版。庄司卓著、イラストは赤石沢貴士。

今の購買層に合ったのか、それとも昔の若者達が買っているのか、そこそこ売れているらしい。

天才ゲーマー女子高生・山本洋子は、その腕を見込まれて未来の戦争に参加することになった。その戦争は様々な利権をかけて国の代表者同志が戦う代理戦争で、安全な脱出転送装置のためにパイロットは絶対に死傷することはない。スカウトされた洋子は特一級打撃戦艦(スーパーストライク)「TA-29 ヤマモトヨーコ」に搭乗し、仲間と共に戦う。

SFバトルにギャグ要素を取り入れた物語です。ロボットや戦闘機ではなく戦艦というのが特徴。火力が凄まじく、統一場粒子兵器ザッパーはその気になれば惑星一つ吹っ飛ばせる超威力。その割に敵チームと口げんかしながらドンパチやる陽気さが面白い。

なお、アニメ版(約10年前)の監督は「化物語」でおなじみ新房昭之氏でした(参考動画:TV版OP)。OVA版は面白かったけれど、TV版は不評だった気がする。まあ、昔の話です。〆

※この記事は2011/01/17に「Psychelia.com」に掲載したものです。

「釣り屋ナガレ」

釣り屋ナガレ 8 (少年チャンピオン・コミックス)(Amazon)

オススメコミック。竹下けんじろう著、週刊少年チャンピオン連載終了作品。

釣りを題材にした漫画です。もうすぐ完結全11巻。何となく8巻の表紙が好きなのでサムネイルにしてみました。ワカサギ釣って天ぷらにしてウマいの図。

主人公の釣り屋・流氷馬は釣りで生計を立てながら全国を巡っている少年。氷馬が扱うのは釣果、釣り場の情報、エサなど釣りに関するものすべて。依頼人の要望に応え、あるいは未知の獲物を釣るために創意工夫を凝らして戦う物語。

途中、連載の中断もあって勢いが落ちますが、あの手この手で魚達と戦うナガレが素晴らしい。特に対マグロ戦はアイデアが斜め上をいきすぎてツッコミようがない釣り方をします。釣るというか襲いかかるというか……。他にもいろいろ、釣りが好きなら見ておいて損はないでしょう。〆

※この記事は2011/03/07に「Psychelia.com」に掲載したものです。

「淀川ベルトコンベアガール」

淀川ベルトコンベア・ガール 1 (ビッグコミックス)(Amazon)

オススメコミック。村上かつら著、「月刊! スピリッツ」連載。

家庭の事情で高校に行けず、淀川沿いのベルトコンベア工場で働く少女、瀬川かよ。一人ぼっちの彼女には友達が欲しいという切実な願いがあった。淀川を走る電車の橋の下で、願いを叫ぶと叶うというおまじないを信じ、「ともだちが、ほしい!!」と叫ぶと、ある日工場にクールな美少女がやってきた。工場には場違いな彼女の名は、黒埼那子。何か理由があってアルバイトを始めたらしいが……。はたして、かよは那子と友達になることができるのか。

大人たちと働き同世代の友達がいないかよと、学校で好きでもない友達に囲まれている那子。工場で働くかよと進学校に通う那子。寮生活のかよと家族と暮らす那子。まったく異なる二人の少女の友情ストーリーです。友達とは何なんだろうか、と考えさせられる作品。

1巻はかよが主役、2巻は那子が主役の修羅場。負けるな那子。なんとかついていけかよ。〆

※この記事は2011/04/11に「Psychelia.com」に掲載したものです。

「アーサー・ピューティーは夜の魔女」

アーサー・ピューティーは夜の魔女 (MFコミックス フラッパーシリーズ)(Amazon)

オススメコミック。コミックフラッパー連載中、「フランケンふらん」「ヘレンesp」の木々津克久著。

謎のバクテリアの感染爆発によって、高い能力を身につけた人類は、人に似て人のフリをし人類を支配していた魔の者たちの存在に気付き、そして狩り始めた。アーサー・ピューティーは夜の魔女として恐れられていた存在だったが、団結した狡猾な人間達に追い詰められ、仲間達の下へ逃げ伸びていくのだった……。

「能なしの猿の大群め 霊長類とは我々のことなのに」とは、本作のヒロイン、アーサー・ピューティーの台詞。支配していた者が支配されていた者たちに追われ、個の力では負けないものの集団ではまるで歯が立たない。同類達の住処へ逃げ込んでもすぐに人間達がやってくる。行く先々でトラブルを引き起こしながらもアーサーの逃避行は続きます。

人間以外の視点から人間を視るという、社会風刺の効いた作品です。逃げるアーサーもやられっぱなしではいません。要所では力づく。なお、第6話には木々津克久の別作品のキャラクターも登場します。これは知っている人だけ楽しめる。〆

※この記事は2011/03/29に「Psychelia.com」に掲載したものです。

「蒼き鋼のアルペジオ」

蒼き鋼のアルペジオ 2巻 (ヤングキングコミックス)(Amazon)

非常にオススメコミック。Ark performance著、ヤングキングアワーズ連載中。現在の最新巻は3巻。

2038年、突如として世界中に謎の艦隊群「霧の艦隊」が出現。超兵器を有する霧の艦隊に人類は太刀打ちできず、すべての海洋より駆逐される。それから17年後。霧の艦隊を裏切ったメンタルモデル・イオナを有する潜水艦「イ401」に乗り込んだ千早群像とクルー達は、霧の艦隊に戦いを挑む。

メンタルモデルとは、戦艦の人体化のこと。分かりやすく言うと擬人化。霧の艦隊はかつては無人の戦艦群でしたが、何らかの理由でメンタルモデルが生まれたらしい、という設定。ヒロインのイオナ、敵軍のヤマト、コンゴウ、キリシマ、ハルナと、左の画像2巻表紙のタカオなどが存在。大抵は甲板に立ってます。

海洋戦闘もので「沈黙の艦隊」等が好きな人はツボにはまるでしょう。敵艦のソナーに探知されることなく、いかにこちらの攻撃を当てるか。しかも相手にはクラインフィールドという強力なバリアがあり、そのバリアを無効化して攻撃を叩き込むための戦術、化かし合いが楽しめます。

個人的にお気に入りのキャラクターは左画像のタカオさん。主人公達との出会い頭に必殺の超重砲をぶっ放し(海が割れる)、追撃に18発→54分離の対潜ミサイルの雨を降らせる素敵な女性です。霧の艦隊のテクノロジーは人類を超越しているので、普通に戦ったら絶対に勝てる気がしない。戦艦なのに沈降するし。それを主人公らの知謀で覆すのが面白いわけ。〆

※この記事は201/04/18に「Psychelia.com」に掲載したものです。

「さよならフットボール」

さよならフットボール(1) (KCデラックス)(Amazon)

超オススメコミック。「冷たい校舎の時は止まる」の新川直司著、マガジンイーノ連載終了、2巻完結。漫画好きなら絶対に読んでおくべき名作。

中学二年生のサッカー部員、恩田希(おんだのぞみ)は華麗なテクニックを持つスーパープレイヤー。女子サッカー部がないために男子サッカー部に所属し、男子にも負けないほどの実力だったが、フィジカルが違い過ぎて試合には出してもらえなかった。彼女にはどうしても新人戦にでなければならない理由があり奔走するが……。

女子が男子のスポーツで負けじと頂点を目指すという作品は数多ありますが(「ノノノノ」とか)、基本的にはファンタジックな内容が多く、つまりは現実的ではないのが本当のところ。一方で本作はフィジカルの差を前提にしつつも、これぐらいならやれるかもしれない、という夢を抱かせてくれます。

中学二年生という年齢が絶妙で、本編でもヒロインのジレンマとして登場しますが、小学生までは自分の方が背が高かったのに、成長期を迎えた男子達に次々と追い越されていく年頃。互角に渡り合えた子供たちに、性別の違いと言うだけで太刀打ちできなくなっていく。「私にはたぶん時間がないんだよ」の台詞通り、最後の戦いが新人戦という崖っぷちヒロインの戦いの物語。

恩田希が新人戦に固執する理由とは? 果たして試合に出ることができるのか? 勝敗の行方は? 2巻完結とシンプルなショートストーリーですが、長すぎず短すぎず丁度よいぐらい。サッカーの描写も台詞回しも上々。青春漫画としては抜きんでている、是非とも読んでもらいたい。〆

※この記事は2011/05/15に「Psychelia.com」に掲載したものです。

「月華美刃」

月華美刃 1 (ジャンプコミックス)(Amazon)

オススメコミック。”げっかびじん”と読む。「TISTA」の遠藤達哉著、ジャンプスクエア連載中。

月の国のお転婆皇女・竹之内カグヤは、勉強嫌いのわがまま放題で配下の者たちを困らせていた。成人の儀を迎えようとしていたある日、母の銀后・フジヤが病に倒れる。母の思いをくみ改心して皇女らしくしようとするカグヤだったが、成人の儀がテロリストに襲撃され、一人地球に逃れることになってしまった。月の民から囚人の星・穢星と呼ばれる地球で、カグヤの月へ帰るための戦いが始まる。

カグヤ姫を下敷きにしたアクションもの。ノリとしては「ワンピース」に近い。巫暈支(フツヌシ)と呼ばれる伝国の宝刀を使い、個性豊かな追手たちと戦って行く。時代的には平安時代ぐらいか? 地球に対して月の技術ははるかに進んでいて、宇宙船や衛星があるような世界観です。お供に医者がいたり永遠の命があるわけではない。

一人前の皇女になろうともがくカグヤの成長譚ですが、実力に対して強力すぎる巫暈支(フツヌシ)の力をどう制御し戦っていくかが見所。サブキャラクターたちも個性豊かでキャラが立ってます。下地はできているので、この後のストーリー展開に期待大。

試し読みはこちら。1巻の半分近く読めます。〆

※この記事は2011/05/22に「Psychelia.com」に掲載したものです。

「君と僕のアシアト~タイムトラベル春日研究所~」

君と僕のアシアト~タイムトラベル春日研究所~ 1 (ジャンプコミックスデラックス)(Amazon)

オススメコミック。よしづきくみち著、スーパージャンプ連載中。「魔法遣いに大切なこと」「フレフレ少女」のコミカライズを手掛けた著者のオリジナル作品です。

若き科学者・風見鶏亜紀(かざみどりあき)が経営する春日研究所は、研究所のある春日市内を20年間に渡りスキャンし続けたデータによって、望む時間・場所を模した架空の世界を脳内に再現することができる。被験者はまるでその時にタイムトラベルしたような体験ができるが、あくまで架空の世界であるので、現実の世界には影響を与えない、というもの。

よくあるタイムトラベルものですが、あくまで疑似体験であり、何かしたところで世界の改変はされない、という点で異なります(ただし架空世界に干渉することはできるし、短期間であれば生活が可能)。

現時点で最新刊は3巻。最初の方は忘れていた約束を思い出したり失くした物を探したり、イイ話の佳作ですが、最愛の妹の瑞紀(みずき)の登場とアシアト部屋の存在が分かってから一気に面白くなります。結構長く続きそうなので今後に期待。

なお、試し読みはこちら(集英社漫画ネット)。〆

「いなり、こんこん、恋いろは。」

いなり、こんこん、恋いろは。 (1) (角川コミックス・エース 326-1)(Amazon)

オススメコミック。よしだもろへ著、ヤングエース連載中。

京都に暮らすごく普通の中学生・伏見いなりは、大好きな丹波橋くんに告白できずにいた。ある日の通学中、いなりは神社の河原で怪我をした子犬を見つけ介抱してあげる。助けた子犬は実は神の使いの子狐で、主人であるお稲荷様こと宇迦之御魂神(うかのみたまのかみ)は、助けてくれたお礼に一つだけ願いをかなえてあげると言う。いなりが望んだ願いとは……。

変身。ヒロインいなりと憧れの丹波橋君を中心に繰り広げられるラブコメです。変身することでトラブルが起きたり解決したりが基本。いなりの物語も良いですが、いなりに能力を授けた宇迦之御魂神(通称うか様)のサブストーリーも秀逸(ちなみに2巻の表紙の神です)。

能力を授けてしまい、お稲荷様としての神通力が欠けてしまったうか様。何故かいなりの兄に敵視され、逆に自分の兄には偏愛を受け、男性不信の結果たどりついた趣味が乙女ゲーの腐女子です。ヒロイン以上のキャラ立ちっぷりが素敵。

変身モノという王道の割に個性的だし、テンポよく、お話も面白いのでオススメです。〆

※この記事は2011/06/05に「Psychelia.com」に掲載したものです。

「エンマ」

エンマ(1) (ライバルコミックス)(Amazon)

オススメコミック。原作:土屋計、ののやまさき著、月刊少年ライバル連載終了。全8巻完結。

戦争、虐殺などで、冥府では多くの死者が溢れすぎて、閻魔王様には裁ききれない。故に原因を滅するためにエンマが人界に遣わされる。エンマは閻魔様に造られた紙人形で、対象の骨を抜いて絶命させる力を持つ。戦争の首謀者、犯罪者、今は平凡でも将来に脅威となる者、国時代老若男女問わず、閻魔様の命に従い始末する。複雑な人の心を理解できないエンマであったが、多くの人間の死に立ち会い成長していく。

和風モノかと思いきや海外での活躍が多いエンマさん。イギリスでは切り裂きジャックをしばいたり、古代中国の偉い将軍をしばいたりします。中世のお話が多いようですが、未来のコロニーにも出没するなど、非常にバラエティに富んだストーリーが展開されます。最初は無感情なただの紙人形だったエンマも、ライバル・ナユタとの出会いや、地蔵菩薩様との邂逅で次第に成長してきます。はたして、彼女が人のために泣き、笑うことができる日は来るのか。

話も絵も上質で、万人にオススメできる良作。完結しているので一気読みにも最適(ただしマイナーなので全巻綺麗にそろう書店はほぼないと思われる)。試し読みはこちら。〆

※この記事は2011/06/19に「Psychelia.com」に掲載したものです。

「ミル」

ミル 1 (ビッグコミックス) (Amazon)

オススメコミック。手原和憲著、月刊ビックコミックスピリッツ連載中。

大学生アキ(♂)の元に、風呂敷包みを背負って突然やってきた少女。その正体は実家で飼っていた猫のミルが化けた姿だった。アキが心配でやってきたというミル。見た目は女子高生でも中身は86歳の化け猫だという。世話やきでちょっとズレてる化け猫と大学生の共同生活が始まった。

女の子が転がり込んでくる居候モノではあるものの、大正時代から生きているお婆ちゃん猫なので、まったく色気を感じさせない不思議な作品。九州弁がチャーミング、料理も超得意、だが見た目に反して中身はお婆さんという変なギャップコメディ&萌え(?)。

画はうまいとは言えませんが(特に表紙はそのせいで損している、中画の方が良い)、話が良くテンポが良く面白いです。青年誌だからか、主人公が大学生と言うのも珍しくて良い。まったり進むストーリーなので癒されたい人、猫好き向け。〆

※この記事は2011/06/27に「Psychelia.com」に掲載したものです。

「アカンプリス」

アカンプリス (TSコミックス)(Amazon)

オススメコミック。「エクセルサーガ」などシュールなギャグ漫画を得意とする六道神士 (りくどうこうし)の1巻読み切り作品。少年画報社の男女逆転ものコミック誌「チェンジH」連載終了。

超お嬢様学校に転入した普通の女子高生三条宝(さんじょうたから)。転校早々はしかで寝込んでしまい、一週間ぶりに学校に来てみれば、休んでいるうちに生徒会役員に任命されていた。良家の子女で頭脳明晰容姿端麗がそろっていると噂の生徒会役員達であったが、宝が生徒会室で目にしたものは……。

主人公が男女逆転、ではなく生徒会役員が男女逆転。しかも筋骨隆々の大男ばかり。彼らはそれぞれの理由があって、他生徒にばれないように女子高生のふりをし続ける。がしかし、他の生徒は彼女ら(彼らが)男だと分かっていてからかっているという構図。

バレているとも知らず必死に演技するごつい生徒会の面々と、それをおもちゃにして楽しむ生徒たち、間に挟まれ奔走する主人公の学園バカコメディ。六道神士特有のぐだぐだ感がなく、キャラクター、ストーリー、テンポも良く、最後まで楽しめる良作です。〆

※この記事は2011/07/18に「Psychelia.com」に掲載したものです。

「世界制服」&「聖モエスの方舟」

     

世界制服 1 (サンデーGXコミックス)(Amazon)
聖モエスの方舟 1 (サンデーGXコミックス)(Amazon)

オススメコミック。「センチメントの季節」など文字通りセンチメンタルな作風を得意とする榎本ナリコ著、サンデーGX(ジェネックス)連載終了と連載中。

「世界制服」は”世界””制服”と”SF”をテーマにしたオムニバスギャグ作品。いわゆるセカイ系作品で、主人公の行動いかんで世界がどうにかなってしまうというお話がメイン。ニートの超能力少年、現実世界にアップロードされたバーチャル美少女、地球侵略しに来たはずの異星人など、奇想天外な主人公たちが登場。

その中の一節にあるのが「聖モエスの方舟学園」で、宇宙戦艦の士官学校で戦う少女たち…をテーマにしたフィギュアシリーズのフィギュア達のお話。短編ではありますが、作者曰く「うっかりぐるぐる考えていたら、ものすごく世界観が広がってしまった」(あとがきより)とのことで、スピンオフ作品として連載が開始されました。それが「聖モエスの方舟」。

男子が希少となってしまった未来の地球。モエナ・ジェラシードは、聖モエス学園が共学であるのにつられ入学するが、入学式の日に学園は宇宙船へと形を変え宇宙に飛び立つ。実は学園は謎の敵と戦う宇宙戦艦で、人類を救うための能力を持った少年少女たちを育成する士官学校であった。戸惑うモエナと仲間たちに対し、宇宙の向こうから大エネルギー弾・星弾(エトワーレイ)が降り注ぐ……。

「世界制服」はサブカルネタを多分に織り交ぜたギャグ漫画。それまでの作者の作風とはまったく異なる作品で、新境地というか暴走ぶりが素晴らしい。怪作が多く楽しめます。試し読みはこちら

「聖モエスの方舟」は設定先行で描かれているようで、左の第一巻表紙はモエナの変身した戦闘服姿(本人に資質があれば身につけている宝石で自由に変身できる)なのですが、……2巻が終わってもいまだ変身してません。重厚なSF大作のように、世界観設定や前フリを押さえつつじっくり話が進んでいきます。漫画的にはこんなゆっくりペースで大丈夫かと心配する反面、いよいよ変身となったらどんな力を発揮するのか楽しみでもあります。

尻つぼみにならず、10巻以上長く続けば名作になるかも。期待を持って推薦〆

※この記事は2011/07/11に「Psychelia.com」に掲載したものです。