月別アーカイブ: 2016年8月

「雪花の虎」



雪花の虎 1 (ビッグコミックス) (ビッグコミックススペシャル)

おすすめコミック。「海月姫」「かくかくしかじか」などの東村アキコ著、ヒバナ連載中。

戦国の英雄、軍神といわれた上杉謙信。武田信玄のライバルとして、歴史に名を遺す大人物ではあるが、実は彼が女であったとしたら? 男社会で強く生き抜く、女謙信の誕生と活躍を描く戦国大河絵巻。

上杉謙信が実は女だったかもしれない、というのは近年注目を浴びた俗説です。結構無理があるらしいのですが、それらしい伝承もあり、今でも小説などの創作物のネタになったりしています。本作は、その俗説を元にしてストーリーが構成されています。

謙信の生涯をなぞっていくので、歴史に詳しい人は男女置き換えて読み、戦国時代どころか歴史そのものが苦手な人は、時代背景説明と並行して書かれている別のコマで、東村先生がまったく関係ない話でお茶を濁してくれるという斬新な構成になっています。誌面の上部では歴史説明、下部では与太話をしているだけという……。

歴史にあまり関心がなくても、読者が楽しめるようにという配慮なのですが、それがあることにより、かしこまって読まなくてもよいエンターテイメントとして、本作を位置付けてくれています。ともすれば悲壮感ただよう戦国ものとしては、斬新な試みと思います。

もちろん、本編はいたって真面目なストーリーとなっており、女武将謙信の苦しみ、喜び、葛藤、そして激戦につぐ激戦を見事に描いています。今後ぶつかっていく武田信玄については、なかなかの曲者キャラとして、独特の味を出しています。彼は超強敵であり、謙信の秘密に迫る男になるに違いない。二人の対決が今から待ち遠しい感じ。

試し読みはこちら。〆

「アンゴルモア 元寇合戦記」



アンゴルモア 元寇合戦記(1)<アンゴルモア 元寇合戦記> (角川コミックス・エース)

おすすめコミック。たかぎ七彦著、ComicWalker連載中。

1274年の元寇・文永の役。対馬に侵攻し、その後博多へと攻め込んでいく蒙古の遠征軍。とある罪により、対馬へと流刑されていた武士・朽井迅三郎(くちいじんざぶろう)は、宗主の娘・輝日姫(てるひめ)にその腕を買われ、蒙古から島を護る防衛軍として戦うことになった。源義経の残した技法「ギケイ流」の使い手である彼は、島を蹂躙せんと攻め立てる蒙古軍に、武力・知略をもって立ち向かう。とはいえ多勢に無勢で勝ち目はなし。勝負は援軍が来るまでの7日間を耐えきること。対馬の歴史に残る激闘の7日間が始まる……。

歴史ものということで、戦の過程や結果が分かった上で物語は進行します。つまり、結局蒙古軍は対馬を抜け、博多へと進行していくのですが、その間で起こった対馬内の戦いの様子が描かれます。歴史ファンでもなければ、どんな戦いになってどのぐらいの被害が出たとか、元寇が終わった後はどうなった等々知らないと思われるので、よくある歴史ものでありながら、興味深く読める作品となっています。

大河ドラマや三国志ものなど、どうなるか大体知ってしまっているものに比べ、結果は知っているけど過程がよくわからないものというのは大抵面白い。「キングダム」などはその典型だと思いますが、本作も期待にたがわず興味深く読み進めることができます。

迅三郎という架空のキャラクターを中心に、ファンタジー要素も含みつつ話が進みますが、戦ものとしてのバトル要素と、一癖も二癖もある人物たちの人間ドラマがうまく組み合わさっており、良作です。

試し読みはこちら。〆

「わたしのカイロス」



わたしのカイロス (BUNCH COMICS)

おすすめコミック。からあげたろう著、くらげバンチ連載中。

とある惑星にて。見世物として、敵と戦い続けなければならないという「剣闘刑」を受けてしまった少女・グラジオラス。古代ローマのグラディエーターのような状況に置かれて失望するが、見知らぬ星に転送され、そこで出会ったロボットの少年・カイロスに勇気づけられる。そこに現れた強力な”敵”。グラジオラスとカイロスは協力し立ち向かうことになったが……。

どう考えても戦うことはできないだろうというひ弱な少女と、さらにひ弱なロボット少年が、絶望的な状況で強大な敵に戦いを挑み続ける、というプロット。

グラジオラスには絶対に負けられない理由があり、たとえ力が弱くても、勇気をもって戦いに臨みます。折れそうになる心をカイロスに支えられ、必死に立ち向かっていく姿が美しい。

様々な星をめぐりながら戦い続けていくようで、銀河鉄道999的に、さまざまな出会いと別れを繰り返して進むバディものになりそう。ストーリー、キャラクター、アクション描写等が平均してレベルが高く、長く続けてほしい作品です。

試し読みはこちら。〆

「ゴールデンゴールド」



ゴールデンゴールド(1) (モーニング KC)

おすすめコミック。「刻刻」の堀尾省太著、月刊モーニングtwo連載中。

田舎の島町・寧島(ねいじま)に暮らす普通の女子中学生・早坂琉花(はやさかるか)は、ある日海岸で人の形をした奇妙な置物を拾う。捨てることもできないので、神社の祠に置き、些細な願いごとをしたところ、なんとその置物が福の神(?)となって琉花の前に現れる。その異形をみて、慌てて逃げる琉花であったが、家に帰ると福の神が民宿客として居座っていた……。それからというものの、急に民宿や売店が繁盛しだす不思議な現象が起こり始めるのだった。

あらすじだけ見ると、何かの昔話のようですが、福の神が普通じゃないので、やや怖さを感じるファンタジーものとなっています。まず、福の神がそもそも福の神かどうか、ほとんどしゃべらない上に、容姿が不気味な地蔵の形をしており、しかも島の人間には普通のおじさんに見えているため、だれも福の神であると断言できません。

そんなものが、自宅に居座っている時点でかなり不気味。しかも、祠に置いたのは琉花ですが、元の置物を洗う際に腕を折ってしまい、福の神は片手がない状態、これは許されることなのか悪いことなのか。また、異常なぐらいに店が繁盛していきますが、経営者であるおばあちゃんも取りつかれたように金策に走っていき、琉花を取り巻く環境が大きく変わっていきます。

この状況、不気味ではありますが、都会に憧れる好きな男の子を島内に留まらせるため、琉花は利用することを考えます。目標は都会のアニメイトに負けない品ぞろえの店舗を作ること。うまく福の神を使いこなせればよいのですが、うまい話には裏がある、何かしっぺ返しがあるような気がして怖いところ。不気味な福の神の正体と、琉花の恋路はどうなるのかに今後も注目。

試し読みはこちら。〆