月別アーカイブ: 2017年5月

「人魚姫のごめんねごはん」



人魚姫のごめんねごはん 1 (ビッグコミックススペシャル)

おすすめコミック。原著:野田宏、イラスト:「盤上のポラリス」の若松卓宏、やわらかスピリッツ連載中。

お魚たちの王国に暮らす人魚姫・エラ。ある日、友達の鰹男(かつお)が人間たちに釣られてしまったことを知る。冷酷で野蛮な人間は恐ろしいが、鰹男の供養のために、地上の魚料理屋へ行くことを決意したエラ。そこで彼女が見たのは、鰹のたたきにされてしまった鰹男だった。手を合わせ供養するエラだったが、客の一言で、禁断の行為に手を出してしまう……。

居合わせた客の(食わずに帰るなら)「釣られたカツオも成仏できねぇな」の一言で、カツオのたたきを食すことになったエラ姫は、そのお味に感動してしまうのでした。

お友達を食べちゃったという、その行為に強い背徳感を抱きながらも、美味を忘れることができないエラ姫は、第二、第三の被害者(魚)も供養のためと地上へ向かい、そしてそのお味を堪能してしまいます。決して食すまい、という誓いも美味の前では無意味。「ごめんね、〇〇、いいお味です」が決め言葉。

自分は人魚姫失格だ、という苦しみを抱きながらも、魚を食べるのはおいしい、という欲望に抗えない姫の、共喰いグルメコメディです。エラ姫がダメよダメよと言いながらも、自分の欲望に忠実なところが可愛くもあり、恐ろしくもある怪作。冷静に考えると、かなりサイコティックなエラ姫ですが、この人単なるあんぽんたんじゃなかろうか、と気づくと急に愛しくなる不思議。

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「春と盆暗」



春と盆暗 (アフタヌーンKC)

おすすめコミック。熊倉献(くまくらこん)著、アフタヌーン連載終了。

バイト仲間のサヤマさんは、笑顔がチャーミングな女性。でもちょっと変わったところがあって、接客の際、しつこいお客さん相手には、見えないところで手をグーパーグーパー。その理由とは? カラオケボックスにやってきた女子高生、お客様名簿の名前がいつも違う。よく見ると中央線の駅の名前? 連れてくる男性もいつも違う。はたして何者なのか? その他二編、全四編+おまけのオムニバス作品。

今一つパッとしない男子と、ちょっと不思議な発想をする女子の恋愛もの。淡々とした日常の中で、どこにでもありそうで絶対ないファンタジー感がよい。また、変な娘だな……と思いつつも、少しでもその娘の事を知りたいとする男子陣がほほえましい作品。

なんとなく手に取ってみましたが、落ち着いた内容で気に入りました。読了後、連載誌どこだったのだろうか、と巻末を見たらアフタヌーンとあり、ああ、アフタヌーンっぽいわ、と納得(伝われ)。

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「転生したら剣でした」



転生したら剣でした (1)(バーズコミックス)

おすすめコミック。原作:棚架ユウ、作画:丸山朝ヲ、キャラクター原案:るろお。デンシバーズ連載中。

名もなきオタク会社員である主人公は、交通事故にあい命を落としてしまう。不幸な人生を終えた彼が目を覚ますと、そこは異世界、自分は剣の姿になっていた。剣の姿のまま動き回れることを知った彼は、周囲の敵を斬って斬って斬りまくってレベルを上げるが、魔力を吸われる森で動けなくなってしまった。そこに通りかかったケモ耳の少女・フランに助けられ、フランの夢のため、ともに戦うことに……。

タイトルまんまの話です。剣となってしまった主人公は、へこたれることなく、剣の成長の仕組みを理解し、周囲の敵を倒して着々レベルを上げ、やがて近郊をすべて制圧。外に出た瞬間動けなくなり、そこに奇跡的に訪れたフランに拾われます。

奴隷商人に囚われ、魔獣に襲われていたフランを助けた後は、彼女の夢である「進化」のために戦います。冒険者ギルドに登録し、剣の身に着けたスキルと、フランの持つ敏捷性で強敵を倒しながら、旅は続きます。

剣こと「インテリジェンスウェポン」として、雑魚を倒しながら、地道に自己強化していく様はよく見るMMORPGの光景。プレイヤーがおらず、剣だけで戦うとこうなるのか、という違和感が面白い。”料理王”や”解体王”など、諸事情により変なスキルも所持していますが、それものちの冒険に活きてきます。モンスター相手に戦い続けて得た強さで、並み居る強敵をばったばったと退けていくカタルシスが大きな特徴。

一方で、剣の使い手であるフランの成長も楽しみな作品。ちょっと寡黙ですが、素直で優しい獣娘。しかし、やるときにはやる女の子。黒猫族特有のスピードを活かした立ち回りで、強力すぎる剣を制御し、いかに戦い抜いていくのか。夢である進化を達成できるのか。奴隷からスタートした彼女の人生は、剣を得てどのように変化していくのか、楽しみです。

試し読みはこちら〆。