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「不滅のあなたへ」



不滅のあなたへ(1) (講談社コミックス)

おすすめコミック。「聲の形」「マルドゥック・スクランブル」の大今良時著、週刊少年マガジン連載中。

地上に舞い降りた謎の生命体。それは何のために生きているが分からないが、死んだ生物をコピーしながら学習し続ける不思議な存在。初めて出会った人間は、孤独な寒冷地から、暖かい森を目指して旅立とうという若者だった。その存在は、若者の飼っていたオオカミ・ジョアンとなって、共に歩み始める。その先に森があるとは限らない、広い広い雪原を、ゆっくりと歩み始めた一人と一匹だったが……。

謎の存在が、旅をしながら様々な人たちに会い、影響を受けて成長するロードムービー系の作品です。不死身、死者をコピーできる、何者かによって生み出されたらしい、という以外すべてが謎。言葉もしゃべれないそれは、果たしてどこへ向かい何をなすのか?

やがて現れる敵らしき存在、自分を慕ってくれる者たち、消えていく命……。人の営みと生死に触れながら、徐々に成長していくその存在と、彼に影響を与える美しくも儚い周囲の人間たちのドラマが描かれます。

試し読みはこちら〆。

「聲の形」(こえのかたち)


聲の形(1) (少年マガジンコミックス)

超オススメコミック。マルドゥック・スクランブル(コミック版)の大今良時(おおいまよしとき)著、別冊少年マガジン連載中。今年レビューした中でも、5本の指に入る傑作。というか、No.1。

楽しいことが大好き、退屈が何より嫌いな小学生・石田将也は、今日も友人たちと大はしゃぎ。ある日、彼の通う学校に、耳の不自由な少女・西宮硝子(にしみやしょうこ)が転校してくる。幼い小学生たちは、最初彼女を不思議な存在と感じ興味を持って接していたが、慣れてくると、何をするにも筆談を必要とする面倒な存在と位置付け、将也を中心にいじめを始める……。

幼い子供たちは、朗らかな心を持ちながら時として残酷で、いじめを悪いことと感じません。それどころか、暇つぶし、一時の楽しみとしていじめ続けます。そしていじめられる側というのは、弱く、辛く、耐えがたい屈辱を味わうことになります。

そんな中、障害を持つが故にいじめの対象となってしまった硝子は、からかわれても、うざがられても笑顔で耐え続けます。また、その笑顔はいじめの主犯である将也にも向けられます。将也にとって、硝子は理解の及ばない奇妙な存在であり続け、数年後、やがて彼が辛い状況になったとき、彼女を思い出し逢いに行くことになります。

彼女に逢いに行くところから物語は開始し、その経緯となる6年前(小学生)の出来事が1巻では描かれています。2巻以降は高校生になった二人が再会し、溜めこんでいた硝子への複雑な感情を伝える将也と、それに硝子がどう応えるかが見所になります。早く続きが読みたい……!

余談ですが、75、81、83ページのコマ割り&構図が同じ。繰り返しで時間経過を見せるナイス演出。芸が細かい。絶対に読んでほしい試し読みはこちらから。〆

「マルドゥック・スクランブル」

マルドゥック・スクランブル(1) (少年マガジンKC) (Amazon)

11月に第一作の劇場公開を控える「マルドゥック・スクランブル」のコミカライズ版。原作:冲方丁(うぶかたとう)、大今良時(おおいまよしとき)著、別冊少年マガジン 連載中。

小説のコミカライズにろくなものがないイメージがあったので敬遠してましたが、読んでみたら意外とよかった。帯&巻末の原作者メッセージは褒めすぎにしてもかなり読める。

画はさほどうまくないものの、コマ割りと構図が優秀、アクションとスピード感(緩急)も十分なレベル。ヒロインの内向的(だけど暴力的)な性格も良く出てると思います。

作画風景がYouTubeにアップされていますが(参考動画(YouTube))、著者は新人の女性なんですね。末恐ろしい。

現在は最新の2巻が発売中。原作小説は全3巻で発売中。なお、ライトノベルではなくハヤカワ文庫SFなのでお間違えなきよう。〆

「マルドゥック・スクランブル」

マルドゥック・スクランブル(7)<完> (講談社コミックス) (Amazon)

超オススメコミック。ハヤカワ文庫のSF小説「マルドゥック・スクランブル」のコミカライズ版。原作:冲方丁(うぶかたとう)、大今良時(おおいまよしとき)著、別冊少年マガジン連載終了。完結。

悲しい過去を持つ少女娼婦のルーン・バロットは、彼女を愛妾としていた男・シェルに喉を引き裂かれ車ごと爆破され瀕死の重傷を負う。死の直前、ドクター・イースターにより、命を助けられると同時に金属繊維の人工皮膚を与えられ、周囲の電子機器を自由に操ることのできる力「電子撹拌(スナーク)」を身に付ける。何故、自分は殺されなければならなかったのか? どんなものにも変身できるしゃべるネズミ・ウフコックの力を借り、自分を死に追いやったシェルの犯罪を暴くために戦うことを決意する。

原作小説やアニメ映画版より面白い。コミカライズが成功するまことに稀有な例だと思います。そんなにうまい画ではないけれど、漫画がうまい。緩急が良いし、原作のえぐいところを、重すぎず軽すぎず、うまくコミックに落とし込んでいると感じます。

ど底辺から這い上がっていくバロットが魅力的な作品。法的に禁止されている科学技術によって蘇った代償として、結果を残さないと生存すらままならない追い詰められた状況の中で、自分の存在価値、有用性を追い求めていく少女の戦い。

元少女娼婦というヒロイン的に最悪な前職、時に戦いに溺れ自分を見失うことも、相棒であるウフコックを濫用し傷つけることも、強敵ボイルドから情けなく逃げ回ることがあっても、それらをすべて糧にしてたくましく成長していく。戦うヒロインのお手本のような娘です。

試し読みはこちら。劇場版オフィシャルサイトはこちら(最終作「マルドゥック・スクランブル 排気」は9/29公開)。〆

※この記事は2012/06/11に「Psychelia.com」に掲載したものです。