タグ別アーカイブ: 完結

「ペーパーウエイト アイ」

ペーパーウエイト アイ1 (MFコミックス フラッパーシリーズ)(Amazon)

オススメコミック。原作:田沢孔治、作画:さかもと麻乃。コミックフラッパー連載中。

人形作家の美大生・桐生マリエは、自分の作品のファンを名乗る青年・鵠丸カレルに誘拐されてしまう。マリエはカレルの持つ洋館に監禁され、あなたの黄金の手で「ヒト」を創って欲しいと依頼される。逃げようとするマリエであったが、自分の創った人形たちが命を吹き込まれ行く手を阻む。唯一の救いは”新しく目指した自分自身”をテーマにした人形・マジェンカが身を守ってくれること。はたしてマリエはカレルから逃げのびることができるのか?

ペーパーウエイトアイとは、ガラスを素材としたドールアイのこと。つまり人形の目。ドールものとしては「ローゼンメイデン」が有名ですが、こちらは球体関節人形以外にも主人公の創作物はすべて命を吹き込まれる仕様。しかもマリエの創作物は自身のトラウマをテーマとして創られているため、突飛な造形を持ち凶暴でサイコパス。恐竜の骨格標本に胎児を首吊りでくくった人形とかマリエ恐るべし。逃げようとするとそんな人形たちが襲ってくる。

逃げては捕まりまた逃げる。マリエと人形たちの追いかけっこ。しかし、悪意を持つ人形たちとは違いカレルには何だかんだで良くされているので、誘拐した者された者という主従関係とは違う微妙な距離感が良い。熱烈なファンと創造主の関係がそこにはある様子。カレルの目指す”ヒト”の創作とは何なのか、人形たちはなぜ動き出したのか、マリエの持つ黄金の手とは? さまざまな謎を含ませつつ物語は続く。

試し読みはこちら

※この記事は2011/11/21に「Psychelia.com」に掲載したものです。

「空が灰色だから」

空が灰色だから 1 (少年チャンピオン・コミックス) (Amazon)

オススメコミック。阿部共実著、週刊少年チャンピオン連載中。

年頃の少年少女たちの変な青春ショートストーリー。基本的にはコメディ、のはず。

妙ちくりんで痛々しいヤツがわんさか出てきます。恥ずかしがりを克服しようと、バニー服で深夜徘徊を試みるおバカ。レアなブランド服を手に入れるために、運命とかいう憎いあいつと全力で戦うおバカ。みんなもやってるガガスバンダスにのっかる……のっかりたいけどあれぇ?な、おバカ。

ちっとも甘酸っぱくねぇ、毒々しい辛口の青春の勘違いが詰まってます。お前はどうしてそうなっちゃったのよ? という感じに。絵柄がそんなにかわいくはないけれど、だからこそ、話の中身で戦っている素敵マンガ。是非おすすめしたい。〆

「かりん」

かりん (1) (角川コミックスドラゴンJr.)(Amazon)

オススメコミック。ちょっと古いけど。ドラゴンコミックエイジ連載終了、全14巻。現在は「碧海のAION」連載中の影崎由那著。アニメ化もした作品です。

とある土地に住み着いた吸血鬼一家。人間の血をちょっぴりこっそり吸うことで、慎ましやかに暮らしていた。しかし、長女の真赤果林(まあかかりん)は他の家族とは異なり、血を吸うのではなく血が増えてしまう吸血鬼、すなわち増血鬼だった。

太陽を怖がらず昼間に出歩けること、人間の食事を食べられること、吸血鬼の持つ魔法が使えないこと、代わりに月に一度血を出したくなること、など異端の吸血鬼であるかりん。ある日、その秘密が同級生の雨水健太(うすいけんた)にばれてしまう。普段なら妹の杏樹(あんじゅ)が記憶を消してなかったことにしているが、杏樹のある思惑のために記憶を残したままにする。はたして杏樹の一計とは……。

本作の吸血鬼には血の嗜好があり、何でもかんでも血を吸うのではなく、人間の体質に魅かれて吸血行為を行います。例えば、かりんの父親・ヘンリーは”プライド”、母親・カレラは”うそつき”、兄・煉(れん)は”ストレス”を持った人間の血を好み、吸われた人間は逆に体質を失い、プライドが高くなくなったり嘘をつかなくなったりストレスが減少したり。

かりんの場合は”不幸”に魅かれます。不幸な体質の人を見ると増血し、血を吸う(送り込む)ことができないと、我慢できずに鼻血となって大出血して気絶してしまいます。鼻血まみれのヒロイン、鼻血溜まりの廊下、という画期的な絵面が特徴の作品。凄惨と言うか間抜けと言うか……。

雨水くんはそんなかりんの嗜好にあったとても不幸な人物ですが、それゆえに近付けば近付くほど増血して鼻血を出してしまうので、かりんはいっそのこと彼を幸せにしてしまおうと奮戦します。昼ご飯を買うお金がない彼のために手作り弁当を作ったりしているうちに、いつしか恋心が芽生えていくラブコメ展開。はたしてかりんと雨水くんは吸血鬼の秘密を守り通し、楽しい学園生活を送ることができるのか。

妹の杏樹も魅力的なキャラクターで、この子はまだ大人になっていないので、夕方やくもりの間は太陽の下でも行動することができるという特性を持っています。ところかまわず増血する可能性のある姉をフォローするために、コウモリを飛ばして日夜警戒にあたるという何気に重要な役回り。物語終盤で彼女もまた大人の吸血鬼に変わりゆき、いよいよ人間の生活とはお別れ、姉のフォローができなくなってしまうというシークエンスがあるのですが、最後の悪あがきと献身ぶりは涙なくして見られない感動の物語となっています。是非読んでいただきたい。〆

※この記事は2012/01/09に「Psychelia.com」に掲載したものです。

「フランケン・ふらん」

フランケン・ふらん 8 (チャンピオンREDコミックス)(Amazon)

超オススメコミック。木々津克久(きぎつかつひさ)著、チャンピオンRED連載終了、最終巻。何度か取り上げてきましたが、これで終わり。悲しい。

天才医学者にしてマッドサイエンティストである斑木ふらんの診療録。最終巻の見どころは……事故で体の中心から左右に真っ二つになってしまったふらん。右半身と左半身に分けて自分を手術し、脳の回復を待って再び結合することにした(もうすでにこの作品を知らない人には意味不明だが、それができるのが人造人間たるふらんの能力)。順調に回復を見たものの、左脳のふらんと右脳のふらん、脳の働きによって性格の異なる二人のふらんの意見が対立。ついにはふらん(右)が研究所を飛び出してしまう……。といったお話など。

奇抜なストーリーと手術描写(≒グロ描写)でコアな人気を博した作品でした。グロ描写に耐性があればぜひ読んでいただきたい快作。ドラマCD化はされましたがアニメ化とか(描写上かつ倫理上)絶対無理、そこが悲しくはある。あと、マイナー作品ゆえに店頭在庫がない。この作品が書架にあるかないかで、その書店のコミックスに関する知識とこだわりが分かると言っても過言ではない。

全巻通して一番印象に残ったのは、2巻のエピソード「MULTIPLIES2」。ふらんの手術により、週に一度、細胞分裂で二人に増えてしまう体となった泉屋洋華。意図せぬ泉屋洋華の増殖に対し、ふらんは片っ端から処分(殺害)することで対応しようとするが間に合わない。このまま1人が2人、2人が4人、4人が8人と増え続けてしまうと、40週を過ぎたあたりで1兆人を越え、地球は泉屋洋華の底に沈んでしまう。ふらん「人一人の命は地球より重いって…じっさいそうなんですよ~ 泉屋洋華は地球には荷が重い」。という、皮肉的なエピソードが好き。ケレン味ありすぎです。どこに行った人権。

終わらせるにはもったいない作品ではありますが、まあ、あまり長く続けて内容が軽くなるのもよろしくないので潮時か? 木々津克久先生の次回作にものすごく期待してます。

試し読みはこちら。短い。〆

※この記事は2012/02/27に「Psychelia.com」に掲載したものです。

「かみさま日和」

かみさま日和 1 (芳文社コミックス) (Amazon)

オススメコミック。「ビーチスターズ」の森尾正博著。週刊漫画TIMES連載終了。全3巻。

初出勤の日に会社が倒産してしまい、しかも社員寮を頼りにしていたため住む場所も失ってしまったOL・有坂史美香(ありさかふみか)。さらに財布も落としてしまい途方に暮れていたところ、親切な男・矢部に助けられ、連れてこられた先は神社だった。なし崩し的に巫女として働くことになった史美香だったが、神社に集まる様々な人々に触れあい成長していく。

巫女萌え漫画ではない。お仕事系。テーマは巫女さんです。巫女の主な仕事は神官のサポート、清掃、雑用、中でも多いのはデスクワークだそうです。なんと地味な……。

最初の仕事となるゴミ捨てでは、境内のゴミ(大量)を土木用一輪車に乗せ、ゴミ捨て場までえっちらほっちら運ぶと言う、巫女っぽくないガテン系の作業。ただのゴミ捨て作業ではなく、境内をきれいに保ち自分も清らかでいることを目的とした重要な仕事だと教わります。その他、神社の行事や礼儀作法など、史美香と一緒に学べます。

よく見ると、最初はだらしない立ち姿だった史美香が、途中から凛として、立ち姿が美しくなっていたりします。巫女・史美香の成長と、かつて存在したと言う伝統の祭事「天晴祭り」の実現に向け奮闘する神社の物語です。うまく3巻でまとまっており、テンポよく面白い。〆

※この記事は2012/05/21に「Psychelia.com」に掲載したものです。

「マルドゥック・スクランブル」

マルドゥック・スクランブル(7)<完> (講談社コミックス) (Amazon)

超オススメコミック。ハヤカワ文庫のSF小説「マルドゥック・スクランブル」のコミカライズ版。原作:冲方丁(うぶかたとう)、大今良時(おおいまよしとき)著、別冊少年マガジン連載終了。完結。

悲しい過去を持つ少女娼婦のルーン・バロットは、彼女を愛妾としていた男・シェルに喉を引き裂かれ車ごと爆破され瀕死の重傷を負う。死の直前、ドクター・イースターにより、命を助けられると同時に金属繊維の人工皮膚を与えられ、周囲の電子機器を自由に操ることのできる力「電子撹拌(スナーク)」を身に付ける。何故、自分は殺されなければならなかったのか? どんなものにも変身できるしゃべるネズミ・ウフコックの力を借り、自分を死に追いやったシェルの犯罪を暴くために戦うことを決意する。

原作小説やアニメ映画版より面白い。コミカライズが成功するまことに稀有な例だと思います。そんなにうまい画ではないけれど、漫画がうまい。緩急が良いし、原作のえぐいところを、重すぎず軽すぎず、うまくコミックに落とし込んでいると感じます。

ど底辺から這い上がっていくバロットが魅力的な作品。法的に禁止されている科学技術によって蘇った代償として、結果を残さないと生存すらままならない追い詰められた状況の中で、自分の存在価値、有用性を追い求めていく少女の戦い。

元少女娼婦というヒロイン的に最悪な前職、時に戦いに溺れ自分を見失うことも、相棒であるウフコックを濫用し傷つけることも、強敵ボイルドから情けなく逃げ回ることがあっても、それらをすべて糧にしてたくましく成長していく。戦うヒロインのお手本のような娘です。

試し読みはこちら。劇場版オフィシャルサイトはこちら(最終作「マルドゥック・スクランブル 排気」は9/29公開)。〆

※この記事は2012/06/11に「Psychelia.com」に掲載したものです。

「ラジオヘッズ」

ラジオヘッズ 1 (ヤングジャンプコミックス)(Amazon)

オススメコミック。「カジテツ王子」の向浦宏和著、週刊ヤングジャンプ連載終了、全2巻。

高等専門学校、略して高専。ロボコンなどでおなじみの、技術を専門に学ぶ5年制の特殊な学校形態のことである。小須高専ロボ部は自称「技術の変態」戸川澄次(20)を部長とする超個性派軍団。そのたぐいまれなる技術、ものづくりへの情熱を持って、今日も騒動を引き起こす!

好きな女性教師のコピーロボットを造り、音声機能を足し、武器を積みタンクに仕立て、校内の警備カメラをすべてハックし、自動索敵機能を搭載し、スマホで操縦して対象を無差別攻撃。そんなロボを造ってしまう連中の学園(?)コメディ。

そのほかゲルアクチュエーターによるパワードスーツや小便小僧ウォーターカッターなど、変テコなマシンが出てきます。高専という特殊な学校性も相まって、技術立国日本が生んでしまったよく分からん人間がたくさん登場します。しかし、彼らこそがこの国の技術を支えていくのだろうという、期待も抱かせてくれる不思議なお話。

あっさり2巻で終わってしまいますが、もうちょっと読んでみたかった作品。試し読みはこちら。〆

※この記事は2012/07/16に「Psychelia.com」に掲載したものです。

「フェティッシュベリー」

フェティッシュベリー(1) (アヴァルスコミックス)(Amazon)

オススメコミック。亜樹新(あきあらた)著、アヴァルス・オンライン連載終了。現在は4巻まで発売、5巻が最終巻。

男性の美しい手に性的興奮を感じてしまう女子高生・水原ひより。入学式の日に、女子トイレで運命的な出会いをした少年・成田尚久(の造形)に一目惚れ(欲情)してしまう。過去に自分のフェチズムで手痛い失敗をしていたひよりは、今度は失敗しまいと自制するが、誘惑に耐えきれず尚久の手にかじりついてしまう。ひよりの変態性を知った尚久は、それをネタにひよりを子分扱いするが……。

まあ、恋に落ちるわけです。ひよりには彼女の幼なじみでありよき理解者である少年・関貴臣(せきたかおみ)がおり、彼は案の定、ひよりのことが好き。そして一見まとも、クラスで一番のクールな美少女・浅雛リツカは、これまた人には言えないアブナイ趣味を持っていて、4人の関係を引っかき回します。

幼なじみとやんちゃ系少年との三角関係という、少女マンガの王道的展開ですが、女子二人が変態のおかげで単調にならず、最後まで面白いです。試し読みはこちら。〆

※この記事は2012/12/03に「Psychelia.com」に掲載したものです。

「GUNSLINGER GIRL」【完結記念】

GUNSLINGER GIRL(15) (電撃コミックス) (Amazon)

オススメコミック最終巻。相田裕著、月刊コミック電撃大王での10年の連載に幕。本年度、第16回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞受賞作品。原画展が開催中(GoFa)。表紙は一期生のアンカーとなったクラエス。特典付きの『~with Libretto!II』版は最終話に登場する新キャラの二人です。

現代のイタリア。表向きは障害者支援の公益法人「社会福祉公社」、しかし実際には年端の行かない重度の障害者に機械の体を与え、「条件付け」という洗脳を施した上で政府のための汚れ仕事を行う諜報機関だった。「義体」と呼ばれる少女達は、大人の課員とコンビを組む決まりになっており、それを「フラテッロ(兄妹)」と呼び、コンビで調査や戦闘を行い、テロ組織に立ち向かう。

前巻(14巻)でテロ組織との戦いにあらかたカタがつき、最終巻では事件と社会福祉公社の顛末が描かれます。1巻まるまるエピローグと言ってもよいぐらい。戦いに生き残った者たちが、限りある余生をどのように全うしていくか。この作品の隠れた特徴でもある、はたから見れば不幸な話なんだけど当事者達は前向きにとらえ強く生きていく、そういったエピソードが多い巻です。

シリーズを通して見ると、機関銃を平然と撃ちまくってテロ組織と戦う少女、という一見ありえない情景を、なるべくリアリズムを持って表現することができた作品。

一家殺害事件の唯一の生き残り、家族の死体のそばで一晩中暴行を受け自殺を望む重症の少女を、障害者支援の名のもとに接収して義体化(半サイボーグ化)、投薬により洗脳して諜報機関の兵士としてこき使う。しかも寿命が数年しかなく、記憶の経年劣化があり、命令には子供殺しも辞さない絶対服従のマシーン……。こう書くとろくでもないなあ。

とはいえ、自殺するよりはマシだろうし、テロとの戦いという社会貢献もできるのだから少しの光明を見いだせる。何より(洗脳されてるとはいえ)当事者たちが笑顔を絶やさないのが唯一の救い。そういった強いけれど可愛そうな少女が魅力だったのでしょう。後半アレですが。

また、「フラテッロ」の関係性と言うのも面白かったです。担当官と少女兵士、主従関係にある二人組ですが、まあ常識的に考えて、今日からこの少女がお前の部下な、義体化されてめちゃ強いから気にせずこき使え、と言われて素直にハイそうですかと使えるわけもなく。当然、手に余る状態になるわけです。兵士として見る事ができず、死んでしまった本当の妹を投影したり、情をこめすぎたりこめなかったりで失敗したり、年頃の少女の取り扱いに悩んだり……。担当官の苦労もたえません。そんな彼らと少女らの関係性にも注目です。

数あるエピソードの中でも、義体の1人、アンジェリカの「パスタの国の王子様」関連はコミック史上に残るであろう名エピソードなので必読。これを機に是非。第一話の試し読みはこちら

※この記事は2012/12/16に「Psychelia.com」に掲載したものです。