タグ別アーカイブ: 講談社

「春と盆暗」



春と盆暗 (アフタヌーンKC)

おすすめコミック。熊倉献(くまくらこん)著、アフタヌーン連載終了。

バイト仲間のサヤマさんは、笑顔がチャーミングな女性。でもちょっと変わったところがあって、接客の際、しつこいお客さん相手には、見えないところで手をグーパーグーパー。その理由とは? カラオケボックスにやってきた女子高生、お客様名簿の名前がいつも違う。よく見ると中央線の駅の名前? 連れてくる男性もいつも違う。はたして何者なのか? その他二編、全四編+おまけのオムニバス作品。

今一つパッとしない男子と、ちょっと不思議な発想をする女子の恋愛もの。淡々とした日常の中で、どこにでもありそうで絶対ないファンタジー感がよい。また、変な娘だな……と思いつつも、少しでもその娘の事を知りたいとする男子陣がほほえましい作品。

なんとなく手に取ってみましたが、落ち着いた内容で気に入りました。読了後、連載誌どこだったのだろうか、と巻末を見たらアフタヌーンとあり、ああ、アフタヌーンっぽいわ、と納得(伝われ)。

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「川柳少女」



川柳少女(1) (講談社コミックス)

おすすめコミック。五十嵐正邦著、週刊少年マガジン連載中。4コマ漫画。

普段まったくしゃべらず、伝えたいことはすべて川柳で伝える少女・雪白七々子。顔は怖いし喧嘩は強いが、川柳好きな男子・毒島エイジ。日々のあれこれを川柳にのせて、まったり学園生活を満喫中。

五七五系女子ラブコメ、という新たなジャンルを切り開いた作品。川柳や俳句といえば、過去には「GO!GO!575」なるアニメ、ゲームがありましたが、本作はそもそもヒロインがしゃべらないという大胆な作り。

七々子は基本的にしゃべらず、意思伝達は川柳(筆談)で行います。周囲の人間は理解があり(?)、声を出さなくても許容となってます。しゃべらない分、ちょっとした仕草や表情が可愛く、好感が持てます。川柳も堅いものではなく、日常会話をそのまま句にしたような感じでグッド。

そんな七々子が気になる男性が、元不良のエイジ。偶然出会った二人ですが、ともに文芸部へ入部し、川柳を通じて交流を深めていきます。エイジの句は……なんというか、独特の味があります。ちょっと不器用だけれど、なかなか頼りになりそうな好感の持てる男。はたして七々子の想いは届くのか?

キャラが立っていて、話も面白く、川柳だからといって堅苦しくもなく、気張らずゆるーく読める良作です。

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「架刑のアリス」



架刑のアリス(1) (KCx)

おすすめコミック。由貴香織里著、ARIA連載中。

大財閥、久遠寺家の四女・久遠寺星(くおんじすてら)は、長兄・是乃(ぜの)が大好きなブラコン女子高生。是乃兄がいれば大丈夫と、兄に絶対の信頼を寄せていた。ある日、9人兄妹が一堂に会した「お茶会」で、母・織雅(おるが)から衝撃の発言が飛び出す。「兄妹全員で殺し合いをしてほしい。生き残った一人が久遠寺家を継ぐ者となる」。突然の宣告に動揺する兄妹だったが、有無を言わせず戦いの火ぶたが切って落とされた。かつての兄妹たちに追い詰められたステラだったが、その時、超戦闘的な人格・血塗れアリスが覚醒する……。

かなりマッドな変身ヒロインものです。ステラはアリスに変身することで理性のタガが外れ、身体能力も向上し、問答無用で敵をぶちのめすことができます。殺す相手は自分の兄妹たち。殺らなければ殺られる、という状況で、ステラは生き残ることができるか? という感じ。

ステラは大好きな兄・是乃を救うために戦いますが、もちろん兄妹を殺せと言われて素直に殺すわけもなく、絶対的な権力者である母に反抗します。しかし、状況は彼女を戦わせるように変化していきます。そのとき、戦闘用の人格・アリスが出現し、マシンガンを撃ちまくります。

兄妹全員が仲が悪いわけではなく、協力することもあります。また、皆ある理由で特殊な能力を持っているため、そのまま戦っても勝算なしとなれば、色々と知恵を働かせての騙しあいとなります。そもそも頭首になろうという者がいないため、今一つ緊張感に欠けた戦いになっています。それでも戦いが勃発し、つぶしあいが発生する、その辺りの理由と攻防が見どころです。

少年漫画と少女漫画の中間のような不思議な作品。凄惨なバトルと少女漫画お約束の三角関係があったりして、珍しいタイプなのではないかと。

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「淫らな青ちゃんは勉強ができない」



淫らな青ちゃんは勉強ができない(1) (マガジンエッジKC)

おすすめコミック。カワハラ恋著、少年マガジンエッジ連載中。

学力優秀、人付き合いはちょっと苦手な女子高生・堀江青(ほりえあお)。官能小説化を父に持ち、名前の由来はアオカンのアオ。エロい環境に育ったこともあり、男はみんな狼、どいつもこいつも性欲の塊だという、偏った観念を持っている。そのため、青春には目もくれず、大学では一人暮らしをするために、猛勉強をしていた。しかし、とあることがきっかけで、クラスのリア充男子・木嶋拓海に興味を持たれ、恋愛を意識するようになってしまい……。

青ちゃんは偏った性知識があるために、木嶋の行動をすべてエロい行動に結びつけて考えてしまいます。第三者目線で見ると、学生同士のピュアな恋愛のはずが、青ちゃん視点では、変態妄想全開になります。なんてことのない、木嶋のちょっとした一言でパニくって右往左往する青ちゃんと、振り回される木嶋の行動が面白いラブコメ。青ちゃんのデレ顔が常に可愛い。

興味がないはずの木嶋に、惹かれていったり、離れていったり。揺れる恋心と下がっていく成績。勉強するために集中しなきゃいけないのに、気になって集中できない、という青春真っ盛りの青ちゃん。その前に恋のライバルが出現して、平和な日常がさらに崩されていきます。果たして志望校へ合格できるのか、木嶋との恋の行方はどうなっていくのか?

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「ゴールデンゴールド」



ゴールデンゴールド(1) (モーニング KC)

おすすめコミック。「刻刻」の堀尾省太著、月刊モーニングtwo連載中。

田舎の島町・寧島(ねいじま)に暮らす普通の女子中学生・早坂琉花(はやさかるか)は、ある日海岸で人の形をした奇妙な置物を拾う。捨てることもできないので、神社の祠に置き、些細な願いごとをしたところ、なんとその置物が福の神(?)となって琉花の前に現れる。その異形をみて、慌てて逃げる琉花であったが、家に帰ると福の神が民宿客として居座っていた……。それからというものの、急に民宿や売店が繁盛しだす不思議な現象が起こり始めるのだった。

あらすじだけ見ると、何かの昔話のようですが、福の神が普通じゃないので、やや怖さを感じるファンタジーものとなっています。まず、福の神がそもそも福の神かどうか、ほとんどしゃべらない上に、容姿が不気味な地蔵の形をしており、しかも島の人間には普通のおじさんに見えているため、だれも福の神であると断言できません。

そんなものが、自宅に居座っている時点でかなり不気味。しかも、祠に置いたのは琉花ですが、元の置物を洗う際に腕を折ってしまい、福の神は片手がない状態、これは許されることなのか悪いことなのか。また、異常なぐらいに店が繁盛していきますが、経営者であるおばあちゃんも取りつかれたように金策に走っていき、琉花を取り巻く環境が大きく変わっていきます。

この状況、不気味ではありますが、都会に憧れる好きな男の子を島内に留まらせるため、琉花は利用することを考えます。目標は都会のアニメイトに負けない品ぞろえの店舗を作ること。うまく福の神を使いこなせればよいのですが、うまい話には裏がある、何かしっぺ返しがあるような気がして怖いところ。不気味な福の神の正体と、琉花の恋路はどうなるのかに今後も注目。

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「ちこたん、こわれる」



ちこたん、こわれる(1) (ヤングマガジンコミックス)

おすすめコミック。「イモリ201」の今井ユウ著、ヤングマガジン連載中。

高校一年生・桜坂亮平(おうさかりょうへい)は、一度聞いた声は忘れない、好きな声はスマホに録音して学校で聞くという、極度の声フェチ。一方、同じクラスで、いつでもヘッドホンとマフラー着用の宮原チコは、教師に怒られてもまったくしゃべらない不思議な女の子。ある日偶然、そんなチコの声を聞いてしまった亮平は、可愛らしいその声に一目ぼれしてしまう。何とか仲良くなろうと話しかけるが、相手にしてくれないチコ。執念実って、ようやくきっかけをつかんだと思いきや、チコは事故で死んでしまう……。

死んでしまったのに、チコは普通に登校してきます。一体なぜ? 実はチコはロボットだったのです。から始まるストーリー。正確には、とある理由により、自宅からリモートコントロールしているドローン。また、ドジっこ属性が強すぎて、すぐトラブルに巻き込まれて死んでしまう体質の持ち主。その秘密を共有した亮平は、秘密がばれて学校に来られなくならないように、また迂闊に死んでしまわないように(ドローンが壊れてしまわないように)チコを全力サポートします。

「実は私は」等をモデルにしていると思われますが、ヒロインが何度死んじゃってもいい、という大義名分のもと、色々と無茶な展開を入れてきます。定番ですが、幼馴染でツンデレ気味のヒロインもおり、三角関係もあり。また、声が好き、という点も、後々重要なファクターになっていきます。惚れた声のドローンには会えても、チコ本体には会えないという設定が秀逸。チコ本人に対面する日は来るのか?

なお、単行本巻末には、破壊してしまったドローンの機体リストあり。巻が進むにつれ増えていきます。どんだけ壊れてるんだよ、という。

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「私が言うとおりになる」



私が言うとおりになる(1) (ヤンマガKCスペシャル)

おすすめコミック。毛魂一直線著(すごいペンネームだな……)。ヤングマガジン連載中。

ちょっとストーカーな少女・熊野メイは、超人的身体能力の持ち主だがアホのソウくんに片思い。ソウくんと同じ大学に入りたい一心で、進路希望票を盗み見るが、第一志望は……「魔女」? 俺は魔術を使えると豪語するソウくんを、説得して踏みとどまらせようとするが、なぜか一緒に怪しげな魔術専門学校へ入学することになってしまうことに……。

普通にしていれば可愛いのに、ソウくんを思うあまり、異常な行動および多彩な顔芸を見せるメイ。寄り添う仲になりたいのに、なぜかソウの敵として対峙することになってしまいます。対するソウは、身体能力は高いのにまったく学力がなく、アホ一直線というキャラクター。

この二人のやり取りでお話は進みますが、魔術を否定するメイに実は強力な力があり、肯定するソウにはまるでないところが重要な要素となっています。メイからしたらいらない能力であり、ソウからしたら喉から手が出るほどほしい能力。その力ゆえに、トラブルが発生し、恋の行方がどんどんこじれていきます。

ただ、どんなにソウに嫌われ恨まれても、愛の力で何度でも復活するメイがたくましく、ゾンビじみた行動力で決してめげません。恋する乙女のど根性が楽しめます。二巻からはライバル伊吹も加わり、ラブコメ度アップ。絶対成就しなさそうな恋ですが、ミラクルが起こるか!?

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「終電ちゃん」



終電ちゃん(1) (モーニング KC)

おすすめコミック。藤本正二著。モーニング連載中。

JR中央線新宿発高尾行きの最終電車に現れる終電ちゃん。仕事やお酒で帰りの遅くなった人々が、乗り遅れてはならないその日最後の電車、終電。終電ちゃんは、酔いつぶれた乗客たちを叱咤し、電車に詰め込み、明日はもっと早く帰れと檄を飛ばす。そこにはさまざまな人間ドラマがあった……。

終電の擬人化、ということでよいのでしょうか。電車の精霊というか主というか、不思議なキャラクターです。とりあえず、終電の屋根の上に乗って現れます。作品内で、終電ちゃんの存在がなんなのか、明確はされておらず、そこにいて当たり前の存在として描かれています。

終電ちゃんは、乗客たちのアイドルであり、また、頼れる母のような存在。乗客たちの悩みを聞き、トラブルがあれば解決し、あえて嫌われ役になってでも、終電としての職務を全うしようとします。職人気質、時に融通が利かない、プロの終電なのです。

そして、終電はもちろん中央線だけではないので、おてんばな山手線の終電ちゃん、おっとりな小田急線の終電ちゃんなど、続々と終電ちゃん仲間が登場してきます。人間ドラマで終わりと思いきや、終電ちゃん同士のドラマもあり、今後に期待が持てる作品。それにしても、終電の擬人化という発想ができたのが素晴らしい……。

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「お客様は神様です。」



お客様は神様です。(1) (シリウスKC)

おすすめコミック。メイジメロウ著、月刊少年シリウス連載中。

コンビニ業界では有名な魔店・ネコマーケット威張鬼(いばらき)店。ありとあらゆるモンスター客が現れ、過酷な接客に耐え切れず、新人はあっという間に辞めていく……。そんな悲惨な環境で働き続ける青年・白塚佑司(しらつかゆうし)のもとに、新たなバイト志願者、朱羅々(しゅらら)ちゃんがやってきた。笑顔がとてもチャーミング、何かわけありでバイト生活を続ける彼女は、「お客様は神様です」を標語に今日も笑顔の接客。しかしそんな彼女には秘密があって……。

タイトルのように、「お客様は神様」であることを徹底するために、どんなに粗野な客も丁重におもてなしをする朱羅々。彼女に触発されて周りも……とはいかず、お客様のご要望ならと、殴られても平気だったり、強盗にも笑顔で接客等の度を越した徹底ぶりにややヒキぎみ。すべては親の借金を返すため、けなげに働く仏のような朱羅々でしたが、怒らせるととんでもないことが起こってしまいます。

キツネ目のヒロイン朱羅々が非常にかわいらしく、しかし精神的にも肉体的にも恐ろしい、という非常に困ったキャラクター性が魅力の作品です。お客様のためならば……を基準に行動を起こすため、何をどう解釈されるか分らず迂闊なことを言えない恐怖。

奇想天外なモンスター客と、度を越した店員朱羅々にはさまれ、白塚に安息の日はありません。さらに朱羅々のニート兄・鬼童丸(きどうまる)も加わり、今日もネコマーケットに騒動が……。

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「寄宿学校のジュリエット」



寄宿学校のジュリエット(1) (講談社コミックス)

おすすめコミック。「星天高校アイドル部」の金田陽介著、別冊少年マガジン連載中。

ダリア学園における二つの学生寮勢力、黒犬(ブラックドギー)と白猫(ホワイトキャット)。出身国のいざこざから、事あるごとに対立を続け、時には殴り合いの大喧嘩をすることも。黒犬のリーダー犬塚露壬雄(いぬづかろみお)は、喧嘩が強く仲間の信頼も厚い、理想のリーダー。彼には初等部のころから、一人の女の子に惚れていた。それは、宿敵・白猫の女リーダー、ジュリエット・ペルシアだった。許されざる禁断の恋、はたして彼の想いは届くのか……。

ベースになっているのは、シェイクスピアの名作「ロミオとジュリエット」。愛する二人はしかし、敵対する貴族の息子娘だったというやつです。二人の逢瀬は絶対に仲間に知られてはいけない、背徳の恋。本作でもそこがベースとなっています。また、それ以前に。犬塚は想いを告げられるのか、ジュリエットはそれを受け入れられるのかが序盤のポイント。

ややネタばれすると、告白は想いを物理的にぶちかます方向で早々に成就しますが、もちろん、本筋はその後。犬塚の熱烈な支持者である蓮季、ジュリエットを守る自称騎士のスコット、異なる対立勢力などから、二人の関係がばれないように立ち回っていきます。味方を欺くためとはいえ、時にはジュリエットにアイアンクローをかましたり、サマーソルトで反撃されたりしますが、それも秘密を守るため。

障害を乗り越え、強い絆で結ばれていくであろう二人。バレたら一発で破局、リーダーとしての互いの信頼も失う状況で、いつか周囲に認められ、晴れて真のカップルとなることはできるでしょうか?

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「橙は、半透明に二度寝する」

橙は、半透明に二度寝する(1) (少年マガジンコミックス)

オススメコミック。「血潜り林檎と金魚鉢男」「バニラスパイダー」の阿部洋一著、別冊少年マガジン連載中。

船溜まりのある小さな街で起こる、摩訶不思議な話の短編集。

表紙の女の子は生首抱えていますが、これぐらい普通なので気になさらぬよう。イカ型のエイリアンが攻めてきたりする非日常的世界なので、常識なんて通用しません。こういうものだ、と割り切って読むのが作法。

電撃コミックジャパンが廃刊になり、連載していた「血潜り林檎と金魚鉢男」が残念なことになった(正確にはどうなったか分からない)筆者ですが、今度は短編集なのでいきなり終わっても大丈夫……。うーむ、もっと評価されて良い漫画家なのにいつも不遇。がんばれ。

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「会いにいくよ」


会いにいくよ (少年マガジンコミックス)

オススメコミック。原作のぶみ、「はじめの一歩」の森川ジョージ著、週刊少年マガジン連載終了、完結。

元暴走族の異色絵本作家・のぶみの体験記をマンガ化。2011年3月11日東日本大震災。東京で被災したのぶみは、被災者の子供たちを少しでも励まそうと、協力者たちから4000冊もの絵本を集め、被災地に贈る。しかし、のぶみの元には、被災者のことを考えていない、無神経で自分勝手、偽善であると非難が集中する。そんなつもりではない! このままじゃいけないと、思い立ったのぶみは被災地にボランティアに駆けつけるが……。

偽善と言われても、がんばって被災者の役に立つんだ、という内容の本です。一方で、一人の人間ではどうしようもない、現実の壁にぶち当たり、苦悩し続ける主人公が強く印象に残ります。

当時が誰もが感じた、何かしなきゃならないけど、何をすれば良いのか良く分からない。援助物資を送りたいけれど、交通事情などでままならない。ボランティアでさえ足手まとい。そういった状況と、感情がよく表現されている作品だと思います。

ボランティアに出かけていき、被災者の役に立ってはいるのだけれど、片付けるべき瓦礫の量が膨大すぎて立ちすくむ主人公ら。決して観光に来たわけではないけれど、装備の甘さ、無計画性、手作業による非効率性など、自己満足と言われても否定できない状況が、ますますみじめにさせていきます。

それでもなお、できることを一つ一つこなしていき、子供たちの笑顔と出会う。ガレージに船が突き刺さった工場を掃除する、工場がいつ再開するとも知れず。決して大きなことではないけれど、自己満足かもしれないけれど、世の役に立つ仕事をこなし、家路につく。街の灯りを見て何を思うか。一人の絵本作家の5日間。そんな作品です。

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追伸
迷いましたが、リンクしておきます。
3.11① 東日本大震災発生時のNHKの実況(Youtube)

「累」


累(1) (イブニングKC)

超オススメコミック。松浦だるま著、イブニング連載中。タイトル「累」は「かさね」と読みます。

母は美しき大女優であったが、若くしてこの世を去った。残された娘は母とは似ても似つかぬ醜い容姿であった。幼いころから母とはまったく異なる容姿をからかわれ、いじめられていた淵累(ふちかさね)。ある時、母が女優だったからという理由で、学芸会の主役に選ばれる。主役をまっとうしようと意気込む累であったが、本番当日、クラスメイトのいじめにあい、窮地に追い込まれる。そんなとき、母から託された「赤い口紅」の力を思い出す……。

キスをすると、相手の容姿を奪うことができる。それが「赤い口紅」の力。その力を使って自分より美しい娘の顔を奪い、自らの卓越した演技力で観衆の賞賛を浴びるという、歪な少女の話。第一話はシンデレラが題材となっていますが、まさしくシンデレラの如くの成りあがりストーリーが展開していきます。

一方、その容姿は一時的なものであり、魔法が解けるとやはり嘲られる日常を受け入れられず、苦悩する日々。演技力はずば抜けているのに、容姿が評価を妨げる現実に苦しめられます。学芸会の後、しばらく鳴りを潜めていたものの、時は流れ、再びスポットライトを浴びたいと思うようになった彼女の手には「赤い口紅」……。

なんというか、ぶんどり人生を歩んで行く「ガラスの仮面」といった感じの作品。キスで入れ替わるのは、最近では「山田くんと7人の魔女」に近いか。所詮私なんて、と普段陰気な累が、入れ替わるとものすごくかわいらしく愛おしくなる不思議。やっぱり容姿は大事だよね、という皮肉な結果が哀れでもあり、この作品の面白み。心理描写も秀逸。傑作です。

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「聲の形」(こえのかたち)


聲の形(1) (少年マガジンコミックス)

超オススメコミック。マルドゥック・スクランブル(コミック版)の大今良時(おおいまよしとき)著、別冊少年マガジン連載中。今年レビューした中でも、5本の指に入る傑作。というか、No.1。

楽しいことが大好き、退屈が何より嫌いな小学生・石田将也は、今日も友人たちと大はしゃぎ。ある日、彼の通う学校に、耳の不自由な少女・西宮硝子(にしみやしょうこ)が転校してくる。幼い小学生たちは、最初彼女を不思議な存在と感じ興味を持って接していたが、慣れてくると、何をするにも筆談を必要とする面倒な存在と位置付け、将也を中心にいじめを始める……。

幼い子供たちは、朗らかな心を持ちながら時として残酷で、いじめを悪いことと感じません。それどころか、暇つぶし、一時の楽しみとしていじめ続けます。そしていじめられる側というのは、弱く、辛く、耐えがたい屈辱を味わうことになります。

そんな中、障害を持つが故にいじめの対象となってしまった硝子は、からかわれても、うざがられても笑顔で耐え続けます。また、その笑顔はいじめの主犯である将也にも向けられます。将也にとって、硝子は理解の及ばない奇妙な存在であり続け、数年後、やがて彼が辛い状況になったとき、彼女を思い出し逢いに行くことになります。

彼女に逢いに行くところから物語は開始し、その経緯となる6年前(小学生)の出来事が1巻では描かれています。2巻以降は高校生になった二人が再会し、溜めこんでいた硝子への複雑な感情を伝える将也と、それに硝子がどう応えるかが見所になります。早く続きが読みたい……!

余談ですが、75、81、83ページのコマ割り&構図が同じ。繰り返しで時間経過を見せるナイス演出。芸が細かい。絶対に読んでほしい試し読みはこちらから。〆

「マテリアルポルカ」


マテリアルポルカ(1) (アフタヌーンKC)

オススメコミック。古林奈留著、good!アフタヌーン連載中。

乙女の園、ラ・ヴィエルジュ女学院中等部に入学した勅使ヶ原(てしがわら)アリス。親友の森塚るかとともに、念願かなって入学した学院であったが、晴れの入学式のとき、校則違反の生徒が顔面を銃で吹き飛ばされて死亡する。校則は絶対、守れないものは即死刑。学院は生徒会長・武藤沙羅が恐怖で支配する乙女の城であった。恐怖と混乱の中、アリスは学院に伝わる五つの至宝の一つ「いばら姫(チェーンソー)」を手に入れる。その力で生徒会長を倒し、学院の平和を取り戻すことができるのか……。

頭吹き飛ばされれば大出血で地獄絵図…になるのが普通ですが、本作では、血が吹き出る代わりに、コンペイトウやクッキーなどの可愛らしいお菓子類が可憐に舞い散ります。おかげで血なまぐさくなく、ファンシーささえただよう不思議な作品となっております。

こんな学院、教師や父兄が放っておかないだろう、とは思いますが、作品中に大人は一切出てきませんので、(不自然ですが)話が成立しています。この辺の矛盾に目をつむりながら読まなければいけないので、生真面目な人には向かないかも。同時にそれが魅力でもある。そういうもんなんだ、ということにしましょう。

ヒロイン・アリスは普段は弱々しい、頼りなさげな女の子ですが、武器である「いばら姫」を手にすると一変、強くて美しい戦士に変身(?)します。二面性を持つ少女ですが、さらに少々の異常性も持ち合わせていて、共感をしづらい、変な主人公になってます。この子が一体何者なのか、何を成し遂げるのかが今後のストーリーの軸になりそう。

個人的には、アリスの友達の猿渡つづりさんにがんばってもらいたい。アリスが王子様ならつづりはお姫様ポジション。作者が意識しているかはともかく、か弱いつづりこそが真のヒロインであり、彼女を守るためにアリスが戦うのです。そのためには、どんどん酷い目にあってもらいたい。がんばれ、つづり。

試し読みはこちら。〆

「カオス・ウィザードと悪魔のしもべ」

カオス・ウィザードと悪魔のしもべ(1) (講談社コミックス) (Amazon)

オススメコミック。山本アリフレッド著、別冊少年マガジン連載中。

魔法学校の進級試験の日、落ちこぼれ魔法使いの神無・T・エルクーロスは留年の危機であった。彼女の魔法の最大の難点は、魔法を使うと必ず「ヘンなモノ」を召喚してしまうこと。フローライトの魔法を使うと、全身が光り輝くスキンヘッドの半裸の男が出現するなど、結果オーライとなるものの、普通の魔法が使えない。はたして神無が一人前の魔法使いになることができるのか。

ドジっ子魔女のコメディ……なのですが、魔法で出現するヘンなモノたちが想像の斜め上を行く連中で、萌えジャンル(だったはず)の枠をはみ出してます。ヘンなおっさん率高すぎ。その分のお色気成分を使い魔のエルヴィナが補充するという、絶妙なバランスで成り立っている作品です。

はやりの絵柄でもエロコメでもありませんが、ついつい読んでしまう佳作。なお、これが「進撃の巨人」と同じ掲載誌であることに驚愕した。懐が深いというか何と言うか。試し読みはこちら

「千年万年りんごの子」

千年万年りんごの子(1): 1 (KCx(ITAN))(Amazon)

オススメコミック。田中相(たなかあい)著、コミックITAN連載中。

まだ田舎の風習や言い伝えの残る、昭和後期の話。赤ん坊の頃、親に捨てられてお寺の養子となった青年・雪之丞。大学卒業後、青森のりんご農家の娘・朝日との縁談がまとまり、婿養子となって、夫婦でりんごを栽培することになった。戸惑いながらも田舎の暮らしに順応していく雪之丞だったが、ある日手に入れた不思議なりんごを朝日に食べさせたために、夫婦を引き裂く不可思議な事件に巻き込まれていく。

落ち着いた感じの夫と、明るく朗らか元気嫁のりんご栽培記…と思いきや、思わぬファンタジーが始まる作品。口にしてしまったのは村の禁忌、決して取ってはいけないりんご。しだいに朝日の身体に影響を与えていきます。雪之丞はそうはさせじと対策を講じていきますが、りんごの力には及ばず……。

時間制限があるため、それまでに雪之丞が何とかすることができるのか、引き裂かれていく夫婦愛を取り戻すことができるのかが見所。試し読みはこちら〆。

「ディアボロのスープ」

ディアボロのスープ(1) (講談社コミックス) (Amazon)

オススメコミック。岡崎純平著、別冊少年マガジン連載中。

“人民よ魔女を称えよ、さすれば魔女は人民を満たさん”。魔女たちが統治するエダークス王国は、魔女が国民を守り、魔女は国民たちから称えられる魔女の王国。農耕に向かず収穫の少ない土地で、魔女だけが作れ栄養の底上げを行う「魔女のスープ」により人々は生きながらえていた。そこに侵攻してくる軍国、近代兵器を持つ科学の国・スペルビア帝国により、王国は危機に瀕していた。村人たちの犠牲により、帝国の攻撃からからくも生き延びた下級魔女・ほおりは、帝国への反撃を誓い、謎の男テンマや他の魔女らと共に反抗を開始する。

魔女の武器は大小さまざまな召喚獣、ただし魔女本体は生身の人間と同じで、戦闘には向いていません。帝国軍に包囲されればあっさり倒されて終わり。元々軍隊を持たない国なので、このまま侵略されたら負けるのは目に見えているため、軍師ともいえる謎の男テンマの力を借りての反撃戦。でも魔女は非力で戦闘経験不足、テンマは魔女を戦いの道具としてしか見ていない、という問題あり。はたして王国は侵略の危機を脱することができるのか。

決して画がうまいとも漫画がうまいとも言えないですが、話の続きが気になる作品。今はただの烏合の衆が立派なチームに成長し、帝国にひと泡吹かせることができるのか、テンマとは何者なのか、ほおりは村人の想いに応えることができるのか、作者は漫画がうまくなるのか。試し読みはこちら

※この記事は2013/04/20に「Psychelia.com」に掲載したものです。

「くろのロワイヤル おはよう」

くろのロワイヤル おはよう (講談社コミックス) (Amazon)

オススメコミック。木下由一著、週刊少年マガジンSPECIAL掲載。

ある朝、パジャマ姿の女の子が、突然道の真ん中で生着替えを始めた。目撃者は山野ひとし、高校生。着替えをしていたのは鮫島くろの、魔法使いの少女だった。一般人では見ることのできない魔法、しかし、ひとしはくろのの魔法を無効化できる体質を持っていた。正体を知られてしまったくろのは、ひとしを拉致監禁するのであった。

ワガママ魔女っ子くろのと一般人ひとしのラブコメ未満のギャグ漫画です(通称:魔女っコメ)。女の子の画がうまいとか、エロティックな表現が得意とか、そういった類の作家さんではありませんが、ヒロインを可愛く描けていることと、ゆるいコメディが秀逸です。

ちなみに、表紙はくろのと、机の下でくろのを支えているひとしですが、初版だと帯に隠れて見えません。芸が細かい。試し読みはこちら。〆

※この記事は2013/02/25に「Psychelia.com」に掲載したものです。

「ほんとにあった!霊媒先生」

ほんとにあった!霊媒先生(5) (ライバルコミックス)(Amazon)

オススメコミック。松本ひで吉著、月刊ライバル連載中のギャグ4コマ。

趣味特技が降霊という、霊能力を持つ先生・木林呪理(きばやしじゅり)と生徒と妖怪と猫が織りなす怪奇漫画です。夏だけにホラーコミックを……と思ったら、ついうっかりこの作品をチョイスしてしまいました。

腹を抱えて笑えると言うほどではありませんが、霊能力ネタはいろいろと応用が効いていて面白いです。歴史上の偉人降霊授業、信長の霊を降霊させた女子高生キャラとか、死神・疫病神・貧乏神姉妹、身代わり化け狸ぽんきっつぁん、便利な使いっぱしりクダキツネなど、個性的なキャラがたくさん。

霊能力に興味のある方はどうぞ。〆

※この記事は2010/08/12に「Psychelia.com」に掲載したものです。