

GUNSLINGER GIRL(15) (電撃コミックス)
(Amazon)
オススメコミック最終巻。相田裕著、月刊コミック電撃大王での10年の連載に幕。本年度、第16回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞受賞作品。原画展が開催中(GoFa)。表紙は一期生のアンカーとなったクラエス。特典付きの『~with Libretto!II』版は最終話に登場する新キャラの二人です。
現代のイタリア。表向きは障害者支援の公益法人「社会福祉公社」、しかし実際には年端の行かない重度の障害者に機械の体を与え、「条件付け」という洗脳を施した上で政府のための汚れ仕事を行う諜報機関だった。「義体」と呼ばれる少女達は、大人の課員とコンビを組む決まりになっており、それを「フラテッロ(兄妹)」と呼び、コンビで調査や戦闘を行い、テロ組織に立ち向かう。
前巻(14巻)でテロ組織との戦いにあらかたカタがつき、最終巻では事件と社会福祉公社の顛末が描かれます。1巻まるまるエピローグと言ってもよいぐらい。戦いに生き残った者たちが、限りある余生をどのように全うしていくか。この作品の隠れた特徴でもある、はたから見れば不幸な話なんだけど当事者達は前向きにとらえ強く生きていく、そういったエピソードが多い巻です。
シリーズを通して見ると、機関銃を平然と撃ちまくってテロ組織と戦う少女、という一見ありえない情景を、なるべくリアリズムを持って表現することができた作品。
一家殺害事件の唯一の生き残り、家族の死体のそばで一晩中暴行を受け自殺を望む重症の少女を、障害者支援の名のもとに接収して義体化(半サイボーグ化)、投薬により洗脳して諜報機関の兵士としてこき使う。しかも寿命が数年しかなく、記憶の経年劣化があり、命令には子供殺しも辞さない絶対服従のマシーン……。こう書くとろくでもないなあ。
とはいえ、自殺するよりはマシだろうし、テロとの戦いという社会貢献もできるのだから少しの光明を見いだせる。何より(洗脳されてるとはいえ)当事者たちが笑顔を絶やさないのが唯一の救い。そういった強いけれど可愛そうな少女が魅力だったのでしょう。後半アレですが。
また、「フラテッロ」の関係性と言うのも面白かったです。担当官と少女兵士、主従関係にある二人組ですが、まあ常識的に考えて、今日からこの少女がお前の部下な、義体化されてめちゃ強いから気にせずこき使え、と言われて素直にハイそうですかと使えるわけもなく。当然、手に余る状態になるわけです。兵士として見る事ができず、死んでしまった本当の妹を投影したり、情をこめすぎたりこめなかったりで失敗したり、年頃の少女の取り扱いに悩んだり……。担当官の苦労もたえません。そんな彼らと少女らの関係性にも注目です。
数あるエピソードの中でも、義体の1人、アンジェリカの「パスタの国の王子様」関連はコミック史上に残るであろう名エピソードなので必読。これを機に是非。第一話の試し読みはこちら〆
※この記事は2012/12/16に「Psychelia.com」に掲載したものです。